おはようございます。
滝上の宿で目覚めたら、窓の外は一面の銀世界。車に積もった雪を払わなきゃ……と思ったら、なんとすでに払われている! 実にありがたい。午前中は冬景色を撮影。取材は午後1時から。ひとつの理想形といってよいような北海道らしい暮らし。人生に必要なものは、創作意欲と貢献意欲なのかもしれない。撮影しながらそのようなことを考えていた。8時頃帰宅。
偶然を起こすのが広報と広告の役割
旅の楽しみは、そのまちの魅力をひとつずつ発見することなのかもしれません。丹念に調べて、一度にすべて回ってみるという旅よりも、偶然の出会いや現地で人づてに聞いて訪ねてみるというほうがおもしろい。取材の場合、そういうわけにはいきませんが、何でもネットで調べてからというのでは味気ないような気がします。
僕はフォトグラファーであるため「偶然」というものを大事にしたいという気持ちが強い。単なる偶然というのも多いけれど、自分が遭遇した偶然に意味を感じることがあります。意味のわかった偶然は自分の人生を豊かにしてくれるもの。僕はそういう捉え方をしていますから、偶然が起こると、そこに意味を見いだそうと、つい考えてしまいます。
仕事というものは、ある意味偶然の連続ではないかと思います。これは職種によって違いがあるかも知れません。ただ、どのような仕事をしていても、完全に想定通りということはまずあり得ません。思い通りにいかない。そう感じることが多いはず。
思い通りにいかなくても、プロとして仕事を完結させなければなりませんから、課題解決のために創意工夫やチャレンジを繰り返します。そうするうちに、偶然うまくいったり、よい方法を見つけることになる。これは「偶然」といってもよいのですが、偶然がやってくるまで努力を継続するわけですから、偶然ではなく必然と言い換えてもよいでしょう。偶然と必然は反対の意味ではない。偶然は結果であり、必然はプロセスなのかもしれません。
広報にしろ、広告にしろ、偶然を必然的に起こすために多くの労力と費用がかけられています。
たまたま見かけた記事や広告を見て、商品やサービスを購入する。ほしいものが最初から決まっていたとしても、購入先をA社にするかB社にするか選択するのは情報収集してから……ということが多い。そこでの決め手は、「タイミングよく情報と出合うかどうか」ということになるでしょう。人にしろ、情報にしろ、出会い(または出合い)がなければ、気づくことも気づかれることもありません。どんなに「ほしい」という気持ちを持っていても、どんなに「素晴らしい商品」を持っていても、気づきがなければ存在しないも同じなのです。
道内には「この世の楽園ではないか?」と思うような場所がいくつかあります。ちょっと大袈裟かもしれません。僕がそのように感じる場所だということをご了承ください。これほどの楽園なのに、実はさほど知られていない……ということがあるのです。僕の立場からすると、広報または広告をきちんと行うべきではないかと思ってしまいます。ただ、それは僕の見方であって「大勢の人に来られては困る」という理由から、あえて情報発信してないという事例も多いようです。
ですから、何でもかんでも情報を発信すればよいというものではありません。
健全な広報・広告とは?
こうした例は非常に少なく、世の中の圧倒的多数を占めているのは「どうして気づいてもらえないのだろう? こんなにいい商品なのに……」というものです。それが本当にいい商品なのだとすれば、これほど残念なことはありません。そして、実際に残念な商品・サービスが世の中には案外多い。その理由は、たいていの場合、広報や広告をきちんと行っていないためと言ってよいのではないでしょうか。
自社の商品を消費者に認知してもらうには、当然ながら情報発信力が必要ということになります。ここで参考になるのは、実際にうまくいっている会社のやり方を参考にすることです。同じやり方を真似すればよいという意味ではありません。じっくり観察してみると、おもしろい事実に気づくことがあるのです。
どうしてこんな商品が売れるのだろう……。そう感じるようなものが世の中にはたくさんあります。商品力よりも、宣伝力や販売力のほうが勝っているというケース。こういう場合、顧客不満足をもたらす可能性が高いわけですから、僕らは決して真似してはいけない。けれども、自社の宣伝力、販売力を高める上で参考にすべき点は大いにあると考えるべきでしょう。
地域企業にありがちなのは、商品力に比べて宣伝力・販売力が貧弱であるというケースです。我が社にもそういう傾向が見られます。情報発信ツールを持っていながら、自社の宣伝力はさほど強いとは言えません。あえて抑え気味にしているのでしょう。
商品力と宣伝力。両者のバランスがとれたとき、自社も顧客も満足度は高くなる。消費者は「よい商品に出合うことができた」と喜び、自社も「客数・売り上げが伸びた」という成果を手にすることができる。
宣伝力、販売力は商品力に見合うレベルにまで高めていかねばなりません。また、宣伝するに値するクオリティが自社商品には求められます。
その判断基準はきわめて明快です。自分が消費者だったとすれば、ほしいと思うかどうか? お金を出して、買いたいと思うかどうかです。
スロウの創刊前、ときどきそんな議論がありました。みんな「自分がほしい、買いたいと思うような雑誌をつくりたい」と話していました。当然であり、健全な考えだと思います。仕事を義務的に捉えてしまっている人にはこの視点が欠けています。自分がほしい、使いたいと思うものをつくる。この単純な欲求が仕事には欠かせません。自分が「いい!」と思うものですから、素直に広報・広告ツールをつくることができる。そんな情報発信を行い、実際に商品が売れるようになるのが理想形といってよいのではないでしょうか?