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労使見解の「経営者の責任」について

労使見解の「経営者の責任」について

おはようございます。
 昨日は十勝経営者大学(法律論)第5講が行われました。テーマは「労使見解と今日の労働問題」。なぜか、「労使見解」について僕が話すこととなり、受講生でありながら半分講師を務めるという不思議な体験をさせてもらいました。もちろん、僕は法律についてまったく語ることはできませんから、メインの講師は弁護士の荒木樹氏です。
 僕と荒木氏が交互に講義を行っていくというスタイル。パワーポイントのスライド数は2人合わせて110ページくらいになったと思います。それでも、スピード感を持って伝えていきましたから、時間配分としてはちょうどよい感じでした。準備は大変でしたが、おもしろい試みになったのではないかと思います。
 僕としては、法律的に解釈するとこういうことになるのか・・・というちょっとした発見もありました。事例もおもしろかった。ただ、自社に置き換えて考えてみると、おもしろいではすまされません。重い話もずいぶん盛り込まれていました。
 今日は「激訳・自分史作成講座」ではなく、労使見解、特に「経営者の責任」について書いてみようと思います。

労使見解という言葉は、中小企業家同友会会員以外の人にはなじみがないと思うので、まずはここから説明する必要がありそうです。
 「中小企業における労使関係の見解」。これが労使見解の正式名称です。発表されたのは1975年。労働運動が盛んな頃の話。僕もかすかに覚えている・・・といった程度ですが、「総資本対総労働」といった言葉がありました。当時は「力対力、力を行使しなければ自分たちの生活を高めることはできない」という考えが支配的で、中小企業においても労使が対立するという、双方にとって不幸な状況にあったのです。
 この状況を変えようとして中小企業家が集まって、検討を重ねた結果できたのが労使見解ということになります。「組合への批判は差し控える」「経営者の責任を明らかにする」「労使関係の考え方を提示する」。この3つの視点から考え抜かれた8つの文章。これは今日の企業経営にも当てはまる、同友会の基本思想といえる文章ではないかと思います。
 このあたりについては、僕の著書「激訳・経営指針成文化」の中でも触れているので、関心のある方はご一読ください。
 今回の講義資料をまとめながら、僕が感じていたのは労使見解を構成する8つの文章の中で、「経営者の責任」が最初の項目として記載されているということ。ここに、当時の中小企業家の決意のほどが表れているのではないかと思ったのです。
 すべて自己責任。そう言ってしまうのは簡単ですが、当時の不条理とも思える状況の中で「経営者の責任はこうだ」と明言するには、想像を超える覚悟が必要だったのではないかと思います。

僕は何度も「経営者の責任」を読み返すうちに、少しだけわかってきました。
 実を言うと、最初のうち、僕は労使見解の文章について「文章表現力という点で、完成度がちょっと低いのではないか?」という疑問を抱いていたのです。「バチ当たりな」と言われそうですね・・・。
 そう思った根拠は、書き出しから3回連続、「・・・ません」で終わる文が続いているからです。「経営者の責任」は10の文で構成されています。このうち、文末が「・・・ません」となっているのが6ヵ所もある。通常の文章では考えられません。あっ、思わず、僕も「・・・ません」と書いてしまいました。
 「・・・ません」が消極的な意味で使われると、読み手はネガティブな気持ちになってしまうものです。当然ながら「経営者の責任」ではそうした使い方ではなく、「決意表明」として「・・・ません」を多用しています。

「・・・並大抵のことではありません」
「・・・間違いであることは言うまでもありません」
「・・・期待や甘えは捨て去らねばなりません」
「・・・全力を傾注しなければなりません」
「・・・経営者の能力(判断力と実行力)を要求される時代はありません」
「・・・過言ではありません」

これが「経営者の責任」に登場する6つの「・・・ません」。状況は厳しい。けれども、あきらめずによりよい将来を切り開いていく。そういった意気込みが感じられる文章。
 「・・・ません」以外の文はどうなっているのかというと、ここにも特徴的なものがあります。

「・・・自らの責任を果たしているとはいえないのです」
「・・・発展させる責任があります」
「・・・明確な指針をつくることがなによりも大切です」
「・・・確立する努力が決定的に重要です」

最初から最後まで、責任感と決意に満ちあふれた文で構成されている。これが「経営者の責任」の項目。このように自らを奮い立たせる必要が、当時の中小企業経営者にあったのでしょう。
 労使見解では、僕はこれまで2番目に書かれている「対等な労使関係」についてばかり考えてきましたが、実はこの「経営者の責任」のほうが重要なのではないか? そう思えてきました。責任を十分に果たすことができれば、労使関係のほうも自然に問題が解消される。そう気づいたのです。
 そこでハタと思い出したのが、昨年8月31日、京都で行われた「第5回経営労働問題全国交流会」の第2分散会。この中で京都同友会が行っている「人を生かす経営」実践道場についての報告がありました。
 経営者が責任を果たすには、「経営姿勢の確立」が重要という話。それはもっともなのですが、おもしろいのは経営姿勢を確立するために「自己姿勢の確立」が求められるということ。そして、演題にも大きく「私が変わります」と書かれていました。ここが出発点にして、最大のポイントといえそうですね。
 その京都同友会から(株)スリーシー代表取締役、渡邊博子氏をお迎えし、中小企業家同友会とかち支部2月例会を開催することとなりました。明後日20日(火)午後7時、場所はとかち館です。僕は講演を聴くのがこれで2回目となります。きっと、最初よりももっと深く気づくものがあるのではないかと期待しているところです。
 自己姿勢の確立。これは経営者にも、社員にも、学生にも必要なことですね。

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