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スロウな旅02 牡蠣旅

スロウな旅02 牡蠣旅

おはようございます。
 昨日も快晴。清水、穂別あたりで風景撮影。ものすごく眠い。気温が高かったためだろう。半袖を着るべきだった。夏を感じている自分がいるのに、あたりの風景は春の一歩手前。帯広周辺よりも春は遅く、桜はまだ咲いていなかった。ふきのとうを採集。帰宅後、ふき味噌をつくった。

牡蠣の記憶

昨日のブログで、僕の旅のテーマは「世界中の生牡蠣を食べること」と書きましたが、それほど世界中で食べてきたわけではないことを思い出しました。せいぜい5、6ヵ国かな。韓国で食べていたのは牡蠣チゲだから、これはカウントされない。サハリンでは牡蠣を食べる機会を逸してしまいました。確か、路上で売られていたはずですが、鮮度に若干の疑いを持ったため見送ることにしました。生牡蠣を一生楽しむには、鮮度の見極めと体調管理が重要。疲労回復を目的に牡蠣を食べるなら、品質管理の万全なところで食べるべきでしょう。
 牡蠣でこれまで危ない思いをしたことはありません。ところが、同じ場所で同じ牡蠣を食べながら、一緒に食べた人がその後体調不良を起こしたということが過去2度ありました。一度は国内、もう一度はニューヨークでした。
 ニューヨークで食べに行ったのはオイスターバー。仕事で行ったわけですが、必ず食べに行こうと決めていました。フォトグラファー仲間のM氏と一緒に店に入り、ずらりと並ぶ牡蠣のメニューから選んだのが「ハドソン川河口」の牡蠣。サイズも選ぶことができた。迷わずXL。2人だから1ダースくらい食べられるだろう……。そう思って注文すると、想像をはるかに超える巨大な牡蠣がやってきた。一口では口に入らない大きさ。牡蠣6個を食べただけで、他に何も食べられなくなってしまった。肝心の味のほうはというと、ちょっと泥臭いところが気になった。その後、M氏は気持ち悪くなったようだった。宿に戻ってから、僕は改めて夜の街に繰り出した。1995年頃の話。
 牡蠣にまつわる珍道中はいくつかあるのですが、当然ながら素晴らしい生牡蠣との出合いもあります。こんな場所で……と思ったのは、西オーストラリアのピンナクルス。奇岩が立ち並ぶ不思議な場所のそばにあるホテル。そこに一泊したのですが、食べた牡蠣が最上の味。どうしてこんなに鮮度のいい牡蠣があるのだろう? 地図で見ると、ピンナクルスは海のそばだったんですね。
 美しくお皿に並べられた牡蠣。シングルシードの美しい形。僕には宝石のように感じられました。しかし、中央にこんもりと盛られた物質は何なのだ? なんと、ケチャップではありませんか! 最上の生牡蠣にケチャップとは驚きました。牡蠣の上に直接乗せられていなくてよかった。オーストラリ人はケチャップ好きなのでしょうか? モーテルでスパゲッティをつくろうと思ってトマトソースを買ったら、完全にケチャップ味だったこともあります。オーストラリア人のクライアントでアクセサリーメーカーの社長だったO氏が、「オーストラリア人の味覚はクレージーだ」と言っていたのを思い出します。確かに、訪れる度に不思議な味覚体験をする。もう20年以上前のことなので、今は状況が変わっているかもしれませんが……。

シチュエーションとストーリー性

牡蠣はシチュエーションと一緒に味わう食べ物ではないかと思っています。牡蠣には限らないかもしれません。だが、生牡蠣にはシチュエーションとストーリー性が欠かせない。僕はそう信じ込んでいます。
 我が家ではたまに生牡蠣を取り寄せて食事会を開くことがあります。生牡蠣を取り寄せるには大義名分が必要。僕にとって重要な意味を持つ食事会にのみ、カキキンの牡蠣(厚岸産のシングルシード「カキえもん」)が並ぶ。特別な日であることをしっかり記憶に刻んでおきたい。そういう場面では、僕にとって牡蠣が一番なんですね。
 シチュエーションも非常に重要。本当は海を見ながら食べるのがいい。カキキンのオイスターバー「牡蠣場」で夕暮れ時に味わうのが最高でしょうね。僕は取材で訪れただけですが、このシチュエーションはここでなければ味わえない。
 シチュエーションという点では、バンクーバーのグランビルアイランドで食べた牡蠣も忘れられない。市場とアートギャラリーが建ち並ぶ興味深いエリア。生牡蠣の屋台(?)があって、その場で殻を開けてくれるのです。僕が食べたときには牡蠣好きなメキシコ人がいて、交互に競って牡蠣を注文することとなった。のんびりした空気が流れるグランビルアイランドの中で、牡蠣の殻を開ける店員さん(女性だったと思う)のみ、忙しく手を動かすこととなってしまいました。
 僕以外の人間にはどうでもいい話を書き連ねてしまいました。
 スロウな旅を味わうには食べ物が重要であるということ。それも、ただおいしいだけではなく、それ以上にシチュエーションまたはストーリー性が求められるということです。「何を食べるか」に加え、「誰と食べるか」「どこで食べるか」「どのように食べるか」「何を感じながら食べるか」ですね。このあたり、考え抜いてつくられているのが、帯広の「北の屋台」。どうしてあのくらいの広さ(狭さ)なのか? 実際に食べてみるとよくわかるはず。
 飲食店で「いいな」と思う店に共通しているのは、ライティングがちゃんと考えられていること。心地よい色温度とほどよい明るさ。その場にちゃんと合っている。ライティングに無頓着な店へは、夜入ろうとは思わない。この点、北海道にはちょっと残念なお店が多いような気がします(北海道に限りませんが)。
 ストーリー性に関しても、まだまだ掘り下げる余地があるのではないかと思います。地域の歴史でも店の歴史でも個人の歴史であってもいい。ちょっとしたエピソードがあれば、イメージが広がっていき、それが味覚と一体化して記憶に刻まれることとなる。飲食店はエピソードを提供する、または顧客のエピソードづくりに協力することが大事ですね。来客の人生のワンシーンに関わっているのだ、という姿勢を持つ必要があるのではないかと思います。

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