
おはようございます。
ほぼ一日パソコンに向かう。前半はパワーポイントのデータ作成。2回分の講演資料がまとまった。後半は原稿執筆の準備。ようやく書く態勢が整ってきた。夕方は買い物へ。
北海道では盛り上がりにくい「労使見解」
講演資料のひとつは経営指針研究会のためのもの。昨年同様、第2講は「労使見解」をテーマに開催予定。今期は僕が報告者を担当することとなりました。第2講までは参加者全員で行われ、第3講からグループごとに経営指針づくりが進められていきます。第2講の目的は「同友会らしい経営指針」について学ぶこと。そのためには「労使見解」を避けて通ることはできません。
僕のブログの中では労使見解について2、3度書いているはずなので、今回は少し違った角度から話を進めることにしましょう。
中小企業家同友会に長く在籍している人は別かもしれませんが、会歴の浅い人の場合、労使見解を知らない、または知っていても関心が薄いという傾向があると思います。僕自身、経営指針委員会に加わってからようやく労使見解の存在を知ったという程度。
労使見解について書かれている冊子「人を生かす経営 労使関係における労使関係の見解」を読んでの第一印象。経営指針委員らしからぬ感想かもしれませんが、「今の世の中では当たり前のことではないのか?」と僕は思ってしまったのです。
これは「読み方が浅い」ということでもあるのですが、もしかしたら地域性もあるのかもしれない。そんな気もしています。
というのも、僕の想像に反して、労使見解は今でも熱く語られているのです。僕の印象では大都市圏、とりわけ西日本のほうが熱い。これは中同協(中小企業家同友会全国協議会)の会議に参加しての印象。北海道では会歴の古い一部の会員が関心を持っている程度。あとは経営指針委員や経営指針研究会メンバーでしょう。支部の幹事会や全道の理事会に参加しても、労使見解が話題になることはほとんどありません。
今日的課題というよりも、過去の歴史という扱いになっている。北海道ではそのような位置づけなのかもしれません。
その背景にあるのは、ビジネスにおける主従関係の有無ではないか……と勝手ながら想像しています。そもそも北海道には大企業が少ない。十勝では皆無といってよいのではないかと思います。大企業に近い企業であっても、さほどピラミッド構造をつくってはいない。僕の目にはそのように映ります。札幌圏はどうなのかわかりませんが、おおむねそのようなビジネスの仕方なのではないでしょうか?
大企業を頂点に、下請け、孫請けといったピラミッド構造になっていれば、その関係は「主従関係」になりやすいのではないかと思います。だから、優越的地位の濫用行為を規制する、下請法のような法律が必要になってくる。ビジネスは対等な関係の中で行われるべきものですが、実際にはそのようになってはいないのではないか? このあたり、僕はよくわかっていません。しかし、そのようなビジネス環境で働いている人たちにとって、労使見解は今でも大きな意味を持ち続けているのではないかと想像します。
「人を生かす経営」は今日的課題
元請けと下請けの間に主従関係があれば、下請け企業の社内においても上下関係が生じやすいのではなかろうか? 経営者の経営姿勢がよほどちゃんとしていなければ、そのまま主従関係を自社に持ち込んでしまうことになるような気がします。元請けや親会社と自社とが「対等なパートナー」になっていなければ、自社の社員とも対等にはなりにくい。「社員をもっとも信頼できるパートナーと考え……」(「労使見解」まえがきより)という言葉を受け入れられる経営者は一部に過ぎないのかもしれません。
道内の企業経営者でも、 20年前、30年前ならそのような考えが主流だったのではないかと思います。僕が同友会に関わるようになった18年くらい前には、そうした空気が一部にありました。「社長と社員が対等であるはずはない」。そんな発言をする人がいたことを記憶しています。10数年の間に、状況はずいぶん変わっていきました。社長の世代交代が進んでいますから、労使見解の精神は自然に浸透していくことになるのでしょう。
ですから、労使見解の議論がここ北海道では、あまり白熱しない、盛り上がらないというのは、好ましいことではないかと僕は考えています。こういう歴史があって今に至っている。そのことをしっかり押さえておけばいい。
ただし、労使見解の思想の中心をなす「経営姿勢の確立」(経営者の責任)というところは、改めて深く読み返す必要があるでしょう。さらに言えば、働き方改革によって新たな問題が浮上しつつあります。労使見解の中では3番目の「労使関係における問題の処理について」に相当する部分。ここには「労使のコミュニケーションをよくすることは経営者の責任」と書かれています。情報共有を進め、自社の抱える問題・課題を全社員が把握することが重要。経営者だけでは自社の問題解決法が見えない時代になってきているのです。
経営指針委員会では、「労使見解」という言葉の登場回数がやたら多いわけですが、冊子の本来のタイトルである「人を生かす経営」のほうが重要度が高いのではないか? 北海道で仕事をしていると、そんな気持ちになりやすい。社内のみんなが本当に生き生きと仕事ができているのだろうか? 自分能力を伸ばしたり、自己実現に近づいているといえるのだろうか? そう考えると、「人を生かす経営」をもっと深く読み込む必要があるのではないかという考えに至ります。
この冊子の初版は1989年。同友会の中では、30年にわたってバイブルのように読み継がれてきたもの。冊子に書き込みをしながら、すり切れるまで読み込んでいる人たちもいます。きっと、僕がまだたどり着いてない深い意味がこの中に込められているに違いありません。