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北海道の仕事と暮らし116 仕事の質的向上と消費行動の変化

北海道の仕事と暮らし116 仕事の質的向上と消費行動の変化

おはようございます。
 午前中は標茶町の図書館で仕事をする。S氏は弟子屈で営業活動。昼頃合流。標茶の蕎麦屋さんで冷やしたぬきを食べたら、僕が求めている味そのものだった。食後は急速に心地よい状態となり、気づくと浜中の取材先に到着していた。料理撮影がメイン。ここでも素晴らしい味に出合う。夕方は釧路市内で撮影2件。7時頃仕事完了。食欲はもう満たされていた。福司と冷や奴があれば十分と思い、それがありそうな店に入る。ここも居心地のいい店だった。

マスメディアから地域メディアの時代へ

どの町にもいい仕事をしている人が必ずいますし、今イチな仕事をしている人も必ずいる。ただ、絶対数としては大都会のほうが圧倒的に多いわけです。だから、何となくいい仕事をしている人は大都会に集まるもの……といったイメージを抱きやすい。まあ、超一流となるとわかりませんが、僕らがふだん行きたいと思うような店や仕事を頼みたいと思う人は、自分のまわりに必ず存在する。そう信じてよいのではないかと思います。雑誌の取材をしていると、そういう思いが確信レベルにまで強まってきますね。
 20年か30年くらい前までは、地域メディアが未発達なところがありました。マスメディアの時代。大都市の店ばかりがメディアに登場する。地方都市の場合は誰もが知っているような店が何度も登場する。他においしい店があっても、観光シーズンになると特定の店に行列ができる。メディアが東京一極集中になっていると、こうした現象が起こります。
 そんな理由もあって、地元に住む人の視点で地元の魅力を伝えていきたいと考え、月刊しゅん(1998年創刊)やスロウ(2004年創刊)といった媒体を発行するようになったわけです。我が社の媒体に限らず、全国的に同じような現象がほぼ同時期に行ったのではないかと思います。1990年代から2000年代、人々の価値観が大きく変化していくのを僕は感じていました。
 背景に、バブル崩壊があったのではないかと僕は捉えています。バブル崩壊後の話。出版業界は1996年か1997年をピークに右肩下がりになっていきます。多くの編集者、デザイナー、フォトグラファーが仕事を失った(または単価が下がった)はず。そのうち一部の人たちがUIJターンという形で地方に移り住むことになったわけです。1990年代後半以降、地方で発行されるフリーペーパー、フリーマガジンのクオリティが劇的に高まっていくことになりました。
 フリーペーパー、フリーマガジンだけではありません。地方で制作される印刷物その他のメディアも、ずいぶん垢抜けたものとなっていったような気がします。もともと地方でいい仕事をしていたクリエーターもいましたから、いい仕事をする人の比率が高まったということでしょう。
 地方でのビジネスはどうしても少ない予算の中で行わねばなりません。その中でクオリティの高い仕事が求められるわけですから、地方で活動するクリエイティブ系の人たちには大都市での仕事とは異なる能力が求められる。独自の境地を切り拓こうと模索しながら今に至っています。2010年代に入ってから、そのようなメディアが目につくようになってきました。
 有名人を登場させたり、予算をふんだんに使って制作するのではなく、純粋にアイデアと工夫と努力によって魅力的な情報を発信していく。印刷メディアに限らず、そうした情報発信を行う人が増えてきているのではないかと思います。

一極集中とは逆の流れ

大きな流れを見ると、東京一極集中の傾向は強まる一方なのですが、細かいところを見ていくと、それとは逆の流れを見つけることができるはず。僕の観察する範囲では、「やる気のある人、志の高い人が地方で働くことを選択する」という傾向が見られます。この結果、局所的におもしろい現象が起こっている。こうした人たちは僕らの取材対象となりやすい。もしかすると、こうした局所的現象が地域全体に波及していく可能性があるのではないか? そんな期待を抱かせてくれます。
 大都市に集中するのは、マーケットがそこにあるからという理由に他なりません。あるいは仕事を外注するのに便利だから。しかし、これだけインターネットと物流が発達してくると、大都市にいる必要はないのではないか……と考える人も増えてきているはず。実際、2拠点生活者や移住者も増えつつあります。業種によっては会社丸ごと移転することも可能でしょう。
 地方で育った子供を出生率の低い大都市が吸い寄せる。あるいは、人材を確保したい大企業が地方都市にやってきて好条件で人を集めていく……。こうした不自然な現象はもう少し改善されるべきではなかろうか? そのためには、「やる気のある人の地方での活躍」が重要であるわけですが、そうした他人任せの姿勢であってはいけない。自分たちでできることを着実に行っていくことが重要ではないかと思います。
 できることは大きく2つあります。ひとつは自分が今行っている仕事の質を高めていくという地道な努力。これには数年、数10年という時間が必要ではありますが、必ず行うべきことと言えるでしょう。全国どこに住んでいても自分の能力を高めることはできるはず。やらないという選択肢はありません。
 もうひとつは自分の消費行動を変えていくこと。簡単にできそうにも思えますが、これが案外難しい。僕も、つい安さや便利さで購入してしまうことがあります。できるだけ、自分が応援したいと思うような店や会社から商品を購入する。そんな消費行動を選択することができれば、世の中はもっとよい方向へ向かっていくのではないでしょうか?
 僕はどうしても地域経済循環を最重要テーマとして考えるのですが、それは「地元だけよければいい」という思いからではありません。いい仕事をしている人が正当に評価され、正当な対価が得られるような世の中に近づけていきたいと思っているのです。ですから、生産効率や価格競争力という点で不利な中小企業や個人の作り手による商品のよさを、できる限り紹介していきたいという思いが強い。
 仕事の質的向上と消費行動の変化によって、これからの時代、ビジネスが劇的に変わるのではないかと考えることがあります。

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