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北海道の仕事と暮らし118 紙は文化の嗜好品(仮)

北海道の仕事と暮らし118 紙は文化の嗜好品(仮)

おはようございます。
 午前中は自宅で社内報の原稿を執筆。担当者にメールで送る。午後は商品撮影と某プロジェクトの会議。5時半、北海道印刷工業組合十勝支部総会と懇親会。印刷業の将来について考える。

印刷の定義再考

昨日は印刷工業組合。今日は札幌で日本グラフィックサービス工業会(ジャグラ)北海道支部の総会が行われます。2日連続、印刷会社の集まりに参加することとなる。
 近年、たぶん2010年代に入ったあたりから、「自分は印刷人なのだ」と思えるようになってきました。それ以前は「フォトグラファー」という意識で、1990年代までは「写真家」でした。写真家とフォトグラファーの違いは別な機会に説明することにします。
 印刷人に目覚めたのは、僕が「印刷の定義」を改めたことと無関係ではありません。自社以外では通用しない考えかもしれませんが、印刷の領域を大幅に広げたのです。
 「文字や図版などの原稿をもとに印刷版をつくり、印刷インキなどを塗布して紙などの被印刷物に押しつけ、機械的に複製すること」
 これが従来の印刷の定義。しかし、印刷物を製造するという発想に縛られると、明るい展望を持つことはできにくい。すでに印刷版のない印刷(オンデマンド印刷)も普及しているのですから、「紙などの被印刷物」という部分もなくしてしまってよいのではないか? つまり、こんな感じです。
 「文字や図版などの原稿をもとに、情報を機械的に複製すること」
 ずいぶんすっきりしました。こうなると、インターネットも「印刷」という扱いになります。印刷会社が当然取り組むべき仕事という意識になる。我が社だけではなく、同業他社も同じように考えを改めつつある。それが2010年代の印刷業界ではないかと思います。
 その結果、異業種との境界がどんどん曖昧なものとなっていくこととなりました。ずっと以前からボーダーレス化は指摘されていましたが、今は「自社は印刷業界」と考える意味は薄れているのではないでしょうか? 今後は「自社は印刷出身」といった言い方に変わるのかもしれません。それほど業態は流動的なものとなっています。
 今のところ、印刷機を持って印刷物を製造している会社は印刷会社ということになりますが、すでに印刷機を持たない印刷会社も増えていますし、印刷機を持っていても主力商品が印刷製造ではないという会社も少なくない。多種多様なのです。
 そんな中、僕が「自分は印刷人なのだ」と思うようになったのは、「情報を機械的に複製する」という印刷本来の機能が廃れることはない、これこそ自分のすべきことだ、と再認識したからに他なりません。本当は紙媒体が一番好きなのですが、これが電子媒体であっても構わない。「紙媒体であること」よりも「情報の機械的複製」のほうが僕にとって重要度が高いのです。
 2010年、我が社はKindleで電子書籍を販売しました。まだ日本語対応ではなかったため、販売した本は英語版「オソツベツ原野の廃屋から」です。その後、拙著「北海道 来たるべき未来を見つめて」も電子書籍化しました。ここ数年は紙の本ばかり発行していますが、僕の中では電子書籍熱が再燃しようとしています。

紙と文化

「紙は文化のバロメーター」という言葉がありました。最近聞きませんね。調べてみると、国民ひとり当たりの紙・板紙消費量はベルギーがトップでした。年間304kg(2017年)。日本は209kg、7位。やはり先進国の消費量が多いことがわかります。しかし、近年、紙の消費量を減らしている国が多いんですね。日本の場合、10年前に比べ15%減少しています。フィンランドに至っては46%も減っている。紙媒体がなくなることはないでしょうが、電子媒体で代用可能なものが増えているということでしょう。
 製紙メーカーが用紙価格の値上げと減産に動いているのは、印刷会社にとって頭の痛いところです。しかし、需要の減少を見込んでのことなのでしょう。「紙が文化のバロメーター」とはいえない時代が間もなくやってくる。そう捉えるべきなのかもしれません。
 では、紙媒体はどのような存在になっていくのか? ちょっと変な言い方ですが、「紙は文化の嗜好品」という言葉が頭に浮かびました。嗜好品とは「栄養分として直接必要ではないが、人間の味覚、触覚、嗅覚、視覚などに快感を与える食料、飲料の総称」のこと。紙媒体も電子媒体も、「情報を伝える」という機能(食べ物でいえば栄養分)は変わりません。しかし、快感を与えたり、読み手の感性に刺激を与えるという点では、紙媒体のほうが優位。そこに存在価値をあると考えるべきでしょう。
 自分の部屋の中を見渡したとき、本が乱雑に積み重ねられていると「一掃してしまいたい」という欲求に駆られます。しかし、仮にまったく本のない部屋に身を置いたなら、物足りなさやさびしさを感じるに違いありません。
 我が社の出版事業についていえば、電子書籍で事足りるものと紙の本でなければならないものを区分けする必要がありそうです。日本ではまだ電子書籍が市民権を得ているとはいえない状況。しかし、これから本格的な普及期を迎えることのなるのではないか? 製紙メーカーの強行とも思える用紙値上げと減産方針を見ると、そう予測せざるを得ません。
 何でもかんでも紙媒体に印刷するという時代は、終わりを告げようとしています。紙を使って表現したいものとそうでないものを区別して情報発信する。そんな意識改革が進んでいくことでしょう。
 ここで気をつけねばならないことは、電子媒体を過信しないことです。長期間保存すべきものは、紙媒体でも残しておくべき。たとえば、社史、地域史、自分史といったようなもの。紙への印刷は、今ももっとも信頼の置ける情報伝達手段なのです。

ソーゴー印刷株式会社

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