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北海道の仕事と暮らし123 起業家と企業家

北海道の仕事と暮らし123 起業家と企業家

おはようございます。
 午前9時、旧滝ノ上駅の近くで取材。レストランありすでの昼食をはさみ、取材は5時間に及ぶ。取材ではガンジー種(牛)を初めて見た。M氏の担当記事。取材テーマが2つあるように感じられた。どのようにまとめられるのだろうか? 撮影漏れのないよう、雨の中、入念に撮る。午後2時40分、帰途につく。7時頃帰宅。

自然体の起業家

取材の前半は起業の話でした。おもしろいなぁと思ったのは、子供の頃から経営者になることを自然に受け入れていたということ。家業の跡を継ぐという意味ではなく、自分で事業を興すと考えていた。撮影しながら聞いていたため、若干ニュアンスは異なっていたかもしれませんが、子供の頃から独立志向だったという話。
 さらにおもしろいのは、上昇志向が強いというわけではなく、彼女らにはギラギラした部分がまったくないというところ。だから、自然であり、無理をしている様子もない。そうして当然の成り行きとして会社を設立する。たぶん、こうした人がこれからの時代、増えていくのかもしれません。
 決死の覚悟で家業の跡を継ぐ……というような後継者はこれから減っていくことになるでしょう。後継者不在による廃業が増えていくのは、たぶん避けられません。代わりに、自然体の起業家が増えていく。それはよいことなのかもしれません。昨日はそんなことを考えながら、少し複雑な気分を味わっていました。
 どうして複雑な気持ちになったのかというと、僕の考えの中には「長寿企業を目指したい」というものがあるからです。これは僕ばかりではありません。100年、200年を目指すという経営者は多い。もちろん、ただ生きながらえるというわけではなく、100年、200年たってもビクともしない強靱な企業をつくるという意味です。
 一方、時代の中で役割を終える会社もあるわけですから、その分、起業家精神旺盛な人には事業を興すことが求められます。このバランスがうまくとれれば、地域経済は発展していくはず。ただ、僕の見るところ、まだまだ役割がある会社なのに……と思うようなケースが一部には見受けられる。
 ここが僕にとって、少し複雑な気持ちにさせられるポイントなのです。何10年も続いてきた企業なのに、どうして後継者(次世代の企業家)が頭角を現してこなかったのか? なぜ、経営マインドを持つ人が育たないのか? 
 ちなみに、起業家と企業家は異なります。起業家は自分自身で新しい事業を興す人。起業家に求められるのはベンチャースピリットです。革新的な企業の場合は、社内ベンチャーという形で起業家が活躍することも可能。一方、企業家は「企業経営に取り組む人」。ただし、単に社長という肩書きを持つだけではなく、卓越した経営マインドを持ち、自社の変革に努めることが求められます。
 一番の関心事が「事業」なのか、「経営」なのか。前者を起業家、後者を企業家と考えてもよさそうです。理想としては、起業家から会社を興し、やがてマネジメント力を身につけていき、企業家になっていくこと。そのようにして成長していった企業は多い。しかし、やがてひとつの壁に突き当たる。それが後継者問題なのです。

自分で何かを変えようとする人

僕の知っている範囲では、後継者(僕も含む)の多くはベンチャースピリットを持ち合わせていない。まったくないというわけではありませんが、そのような気持ちにはなれないというのが実情。今存在している自社を何とかしなければならないという気持ちが強すぎるからです。
 後継者は人心を掌握する力をなかなか持つことができないもの。経営指針を成文化し、社風を改善し、人材育成の仕組みを整備し、働く環境づくりを整える……。懸命に自社をまとめようとします。そういう活動を行っているうちに、自分のやりたかったことがどこかへ消えていってしまう。そんな後継者も多いのではないでしょうか。
 企業には起業家と企業家の2種類が必要。そんな気がしてきました。新たな事業を興す人と会社全体のバランスを整えていく人。両タイプの人がいると、健全に発展していくことになるはず。ベンチャースピリットに偏りすぎると、リスクが高まることになる。管理的側面が強まりすぎると、イノベーションが起こらず、企業としての魅力が低下していくこととなる。
 では、どのようにして両者がともに力を発揮できるようにしていくのか? ここが悩みどころといえます。
 昨日の取材の中では、「地元には魅力的な仕事がないと考える同世代の人が多い」といった話が出てきました(ちょっと言い回しは違っていたかもしれません)。問題はその後。「何もないからあきらめる、おとなしくしている」という人が多いようなのです。平日はつまらない気持ちを我慢し、週末になると札幌や旭川へ遊びに行く……。何となく理解できます。
 ただ、そうではない道を選択している人もいるわけです。「なければ自分でつくる」という意思決定をする人。これは間違いなく起業家タイプといえるでしょう。地元がつまらないのなら、おもしろくすればよい。そう考える人が地域の中で増えていけば、必ずおもしろい地域になっていく。
 この点では、地域も企業も同じように考えることができるはず。自社の活動がおもしろくないと考えるのであれば、どうすればもっとおもしろくできるのかを考える。そういう人材がリーダーとなり、起業家になっていくわけです。あるいは、ユニークな発想を持つ人が働きやすいように環境を整備していこうと考える人も出てくるでしょう。こうした人は企業家タイプとして成長していく。
 そう単純に物事が運ぶわけではありませんが、環境に依存するタイプから、自分で何かを変えようとする人へ成長していくこと。企業の人材育成力と個人の自己成長力が問われる時代であることは疑いありません。

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