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北海道の仕事と暮らし125 「地元だから」という理由

北海道の仕事と暮らし125 「地元だから」という理由

おはようございます。
 朝は会社でひと仕事。10時から自宅で商品撮影。どうも体の動きが鈍い。30代の頃に比べると、2.5倍以上時間がかかっているような気がする。午後は写真セレクト作業。取り急ぎ、I氏分の写真データを送る。続いてM氏の分。膨大なデータ。時間切れ。十勝川温泉観月苑へ向かう。4時過ぎから西日本日車会の方々に向けて講演を行う。「出版と編集で地域の魅力と価値を高める」というテーマ。45分間ちょうどで話し終えた。6時半から懇親会。なぜか、僕も浴衣に着替えて参加。9時頃帰宅。

地域企業とは

昨日の講演は中小企業家同友会とかち支部を通じて依頼されたものでした。なるほど、こういう活用の仕方もある……。そう納得しました。旅先で講師を探すというのは容易にできるものではないと思いますが、全国各地の同友会事務局であれば講師の候補は立てやすい。しかも、理念的なところでは会員同士共有していますから、安心して話してもらうことができるに違いありません。
 昨日の会の参加者は広く西日本から来られたようです。それぞれの地域にはそれぞれの課題がある。僕は北海道の持つ課題とそれに対する我が社としての考えを述べていきました。自社の強みを生かしながら、地域の問題に取り組んでいく。企業には売上・利益を上げて雇用を守るという大前提がありますが、それだけでは通用しない時代に入っています。地域のためになにができるのか? そうした社会性を持った企業でなければ、地域企業としての存在意義は薄い。Uターンした頃からずっとそう思い続けています。
 大企業には大企業の、中小企業には中小企業としての責任があるのではないか? そんなふうに考えることがあります。大企業には国際競争に勝ち抜いていくという重たいテーマがあるのでしょう。実際どうなのか、僕にはわかりませんが、弱肉強食のような世界が広がっているに違いありません。
 中小企業の場合、多くは「地域企業」と言ってよいのではないかと思います。中にはグローバル化している中小企業もあるでしょう。ですから、企業規模だけでは何とも言えません。けれども、地方で活動している中小企業の大部分は地域の中に多くの顧客を持ち、働いている社員も地域の中で生活を営んでいる。ですから、紛れもなく地域企業と言えるはず。
 そう考えると、地域の利益に反するような活動を行うべきではない、というのが僕の考えです。ただ、そのことについて、ちゃんと認識するようになったのは、実はスロウを創刊した頃、2004年前後のことだったと思います。
 それ以前はどうだったのか? ビジネスの現場では、「ネット調達」という言葉が一般化するようになった頃。2000年から2002年にかけて、我が社は厳しい時代を過ごしていて、その結果として「変動費、固定費をいかに下げることができるか」ということに執着していました。安く調達できるなら、どこから仕入れてもよい……といった気持ちに傾いていたのです。
 ただ、「安ければよい」と思って突っ走ることはありませんでした。理由は2つあって、ひとつは先代が生前に「仕入れはこのようにせよ」と言い残したことでした。もうひとつは、我が社とも関係の深いS社の社長と話す中で、「多少損をすることはあっても地元から優先的に仕入れている」といった話を聴いたことです。これは僕にとっては重い言葉となりました。

地域が豊かになるようなお金の使い方

我が社のお客様は、なぜ他社にではなく我が社に発注するのだろうか? そんなことをときどき考えます。価格という点でいえば、もっと安い印刷会社はたくさんあるはず。品質が高い、デザインがよい、営業の対応が好ましい、何となく頼みやすい……。いろいろ理由があることでしょう。地元の同業他社にも発注している企業も、相応の理由があるのではないかと思います。
 数多くの理由が考えられる中で、ひとつ重要なものがあることに僕らは気づかねばなりません。それは「地域の印刷会社だから」という理由です。ふだんは忘れているかもしれませんが、「地元だから」という理由がどこかにある。僕はそう確信しています。
 スーパーで買い物をする際、同じ野菜が並んでいたら自分はどのような基準で選ぶのか? たとえば、十勝産とメキシコ産のアスパラと並んでいたら……。値段が一瞬気になっても、十勝産を選ぶという人が多いのではないでしょうか。もちろん、節約する必要があって価格を重視せざるを得ない人も多いことは事実。最終的にはどちらを選んでも正解といってよいでしょう。ただ、価格を超えた選択基準を持つ人が増えていくと、地域は豊かになっていく……。地域経済循環につながっていくわけです。
 2000年前後から活発になっていったネット調達、ネット通販は、ますます勢いを増しています。市場は右肩上がり。気づくと、日本のEC市場は18兆円(2018年度)。逆に、百貨店が6兆円割れするなど、リアル店舗が苦戦するという状況が続いています。
 B2Cだけではなく、B2Bにおいてもその傾向にあると考えるべきでしょう。どの企業も最終的には利益を確保しなければならない。個人の消費生活では「心理的満足度」が大きなウエイトを占めますが、企業の場合は「決算書の数字」のほうが心理的満足度に優先する。そう考える経営者、担当者が多いに違いありません。
 ただ、そこに異を唱えたいと思うのです。損得を追い求めて域外企業に調達先を変えてしまうと、当然ながらお金が域外に流出するということになります。北海道の場合は、それが年間1兆円にも及びます。もし、同じものを同じ品質で購入できるのであれば、多少高くてもできるだけ地元調達を心がけるべきではないか? このあたり、自社の経済的余裕によって異なるとは思いますが、可能であればできるだけ地元調達率を高めること。それが地域企業には求められる。我が社の調達活動にも、まだまだ課題は多いと思います。自分の消費生活と自社の調達状況。両者を見直す必要がありそうです。

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