おはようございます。
昨日は旭川で行われた「かみかわフードツーリズムワークショップ」に参加してきました。講演、ワークショップ、トークセッション、いずれも刺激的な話でした。僕自身はどうしてもプロダクトアウトな視点にとらわれてしまいますが、マーケットイン、もしくはマーケットアウトな発想が求められますね。と言いつつも、僕は「自分のつくりたいものをつくる」といった発言をしてしまいましたが・・・。
経済活動においては、どんな業種であっても、市場の動向や顧客のニーズに対し敏感であるべきです。とはいえ、「自分のつくりたいもの」でなければ、本当にいいものを生み出すことはできない。自分が心からつくりたいものであり、市場からも受け入れられるもの。両者の重なったところに、自分たちの行うべき活動があると僕は考えています。
「激訳・自分史作成講座」も、残すところあと2回。今回は自費出版と商業出版について考えてみようと思います。
自費出版物が売れる可能性は極めて低い
大きく分けて、出版物には自費出版と商業出版とがあります。両者の中間に位置するものとして、共同出版という形態もありますが、これについては後述します。
自費出版とは、文字通り著者が自分の費用で発行する出版物のことをいいます。100%自費ですから、著作権等、他人の権利を侵害しない限り、自分の思い通りに制作することができる。ここに最大のメリットがあるといってよいでしょう。
一方、商業出版の場合はどうか? 商業出版とは、出版社が企画を立て、販売収入の中から利益が出ることを見込んで出版される本のことです。中には、採算を度外視して出版されることもあります。しかし、それは出版社(または編集部)が「世に送り出す価値がある」と判断して、出版されるものに限られます。何でもかんでも本にするというわけではありません。
個人の創作活動として出す自費出版と、企業の経済活動として行われる商業出版。同じ本であっても、出版の目的には明確な違いがあると考えるべきでしょう。
「自分の執筆した本を販売したい」。そうした要望が寄せられることがときどきあります。当社は印刷会社でありながら、クナウマガジンという出版社でもあります。2004年以降、数多くの商業出版物を手掛けてきましたから、商業出版の相談をいただく機会も次第に増えてきました。
結論から言うと、自分史の場合は販売しても売れる可能性は極めて低いとお考えください。これは本のクオリティの問題ではありません。著名人でない限り、本を購入して見ず知らずの人の自分史を読もうという読者はほとんどいないでしょう。自分史は、自分とつながりのある人にとって特別な価値のある本なのです。したがって、自分の知人に読んでもらうことを前提に、自分の思い通りに執筆するのがよいと思います。
自分史以外の自費出版物の場合は、販売の可能性が出てくることもあります。極めて希なケースですが、自費出版として持ち込まれた原稿に商業出版としての可能性を見いだし、全国出版された例もあります。当社に出版部門が誕生する前の話。「国字の字典」(著者・菅原義三さん)の原稿が当社に持ち込まれ、その価値に気づいた先代社長が東京堂出版に打診。商業出版物として販売されたことがあります。初版から30年近くたった今も、版を重ねるロングセラーとなっています。
小説、エッセイ、句集、学術書、実用本、絵本、画集、写真集といったもの中には、プロ顔負けのハイレベルな著作物を見かけることがあります。商業出版として世に出る可能性は低いものの、可能性ゼロというわけではありません。
費用のすべてを著者が負担する自費出版と、すべて出版社が負担する商業出版。両者の中間に位置するものとして、「共同出版」「協力出版」といったものが存在します。初版費用を著者が負担する代わりに、書店流通を出版社が行うというもの。著者と出版社が費用を折半できるということで、少しずつ広がりを見せている出版形態です。
しかし、共同出版には落とし穴もあると知っておくべきです。
「あなたの本が書店に並びます」といった宣伝コピーには用心したほうがよいでしょう。決して不可能ではありませんが、売れる可能性のない自分史が全国の書店に配本されることはありません。「書店に並ぶ」という過大な期待からトラブルに発展する事例が全国で数多く起こっています。共同出版の中には、「書店から棚を借り、一定期間並べるだけ」とか「注文分にだけ対応する」といったものもあります。書店流通をウリに高額な料金を上乗せされるケースもありますから、気をつけてください。
当社でも、自費出版物を書店に配本することがあります。事例としてはさほど多いわけではありません。こうした出版物は、「販売する価値がある」または「クナウマガジンのコンセプトに近い」ものに限られます。そして、流通経費等の実費のみ著者に負担していただくこととなります。配本のエリアは北海道内。それも一部の書店に限られます。
ちなみに、「クナウマガジン」のレーベルで発行される本は、基本的に当社の企画出版に限定されています。
自費出版と商業出版と共同出版。これらの境界は実に曖昧なものとなっています。