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第32話 産地直食

第32話 産地直食

おはようございます。
 午前中はひたすら休養。11時、撮影データのコピー。午後は投票所へ。年配の人が多い。若い人たちは期日前投票を済ませているのだろうか? 投票を終えてから買い物へ。スーパーはやけに混んでいた。投票→買い物という流れができているのだろうか。いや、違うな。スーパーの集客力のほうが圧倒的に高い。スーパーの中に投票所を設けるほうがいい、と思うほどだ。3時半頃帰宅。なぜか、ひとりでカレーを作る。僕の作り方は超シンプル。そして程よくおいしい。開票速報を見てから眠る。

「そのまま」という付加価値

昨日の朝は、3日間の運転疲れのためかほとんど仕事ができず、テレビを見ながらぼんやり食べ物のことを考えていました。
 僕らが求めている食べ物には2種類ある。ひとつは「プロの料理人がつくるような最高の料理」。もうひとつは「ほとんど手を加えず素材のよさを味わう料理」。後者の場合は、料理になっていなくてもよい。素材を直に味わうのも楽しいものです。
 どうしてそんなことを考えていたのかというと、土曜日、長沼のとある農家を訪ねたとき、ピーマンを食べさせてもらったのです。ちょうど、昼休みの時間だったのでしょう。収穫したばかりのピーマンを水につけ、Sさんたちは種ごと食べていました。味は塩とオリーブオイルだったはず(ちょっと記憶が曖昧)。それだけで十分すぎるほどおいしい。自宅でも試してみようと思います。
 取材であちこち訪ねると、こういう経験をすることがときどきあります。その場でニンジンを引き抜いて「食べてみて」と言われたこともある。土のついたニンジンをそのまま食べる。土がおいしいとは思いませんが、ニンジン本来の味に驚きました。果物をもいで食べるというのは、どちらかというと普通。フルーツ狩りと同じようなものですから。ですが、土から引き抜いてそのまま食べるというのは、北海道内でもそう簡単にはできないと思います。まず、無農薬でなければそういう食べ方は困難。
 それだけに、食べ方として、すごい付加価値ではないかと思うわけです。自分は今、土がついたままの野菜を丸かじりしている……。このちょっとした非日常的なシーンが味わいを倍増させているのかもしれません。
 漁港の取材をしているときにも体験することがあります。「ほれ、食べてみな」と言って、食べさせてもらった魚介類はどのくらいあったでしょう。この仕事をしていてよかった、と思える瞬間です。ホタテ、カキ、エビを食べたときなどは「海水は最高の調味料だ」と思ってしまいます。
 郊外を車で走っていると、車を停めて山菜を採っている姿をしょっちゅう見かけます。ちょっと前まではフキを採っている人が多かったですね。僕も2、3年前に「青ブキ」がおいしいということを知ったばかり。道内いたるところにフキが生えていますから、いわば採り放題。山菜に詳しければ、道内各地食材の宝庫といえます。邪魔者扱いされているイタドリも食べてみるとおいしい。

技術を使うか使わないか

そういえば、子供の頃は通学途中にいくつかの「食材」があって、僕はよく食べていました。一番食べたのはグスベリ(グスベリー)。次はクルミ。木になっている実に石を投げて落とすというやり方。それから石でクルミの殻を割って中身を食べる。グスベリよりも難度が高い。しかし、子供特有の破壊欲といったものが満たされる。
 こうした昔の感覚が今もどこかに残っていて、収穫物をそのまま食べたいという欲求が今なお強いのではないか? 料理人が腕を振るえば振るうほど、素材そのままではなくなっていくはずです。そういう料理もときどき味わいたいと思いながらも、僕はどちらかというと素材主義に近いところがあります。肉や魚なら、ただ焼くだけがいいと思ってしまう。
 プロの料理の場合、ちゃんとした技術を持ちながらも、使う技術を最小限に留めているというのが好きですね。素材が主役で、ひと技使うだけといった料理。技術を使わないことで、逆に技術の高さを感じさせる。抑制の美といったようなものを感じるわけです。これは僕らの仕事においても当てはまるのではないか思います。技を使いすぎると、素材のよさが損なわれる。ここは気をつけねばなりません。
 北海道は素材に恵まれた土地。それゆえに、「原材料の供給地」とか「日本の食料基地」といった言い方をされることが多い。これにはプラスの意味もありますが、見方を変えると「付加価値をつけるのは道外である」と言っているのに等しい。「日本の食料基地」であることに誇りを持ちつつも、北海道が経済的に発展していくには、付加価値創造力が欠かせません。
 ただ、そのときに考えるべき点は、道外企業と同じような加工の仕方ではいけないのではないか、というところ。素材のよさをちゃんと生かしているかどうか? ここが重要だと思うのです。
 流通や賞味期限などの問題があって、加工食品の場合はどうしても添加物が多くなりやすい。漬物など本来の味と似ても似つかぬものとなっています。ソーセージにもベーコンにも、よくわからない添加物が入っている。できるだけ素材そのものに近づけるための何かいい方法があるとよいのですが……。
 食品加工については、「高い技術を使う」か「極力使わないか」のどちらかでしょうね。
 そもそも、食べ物が何ヵ月も腐らないというところに不自然さがあるわけで、消費者である自分たちの側に問題があると考えるべきかもしれません。便利さを追い求めないこと。食品メーカーや流通に求めるよりも、消費者の意識改革のほうが先でしょう。ときどき、ジャンクフードも食べてしまう僕ですから、あまり食生活について言える立場にはありませんが……。

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