
おはようございます。
やけに湿度の高い日だった。それでも雨は降っていない。午前9時、意を決して、庭の梅を収穫する。上から下まで完全防備。虫除けネット付き帽子をかぶって収穫を開始。ここ数年で枝がずいぶん伸びて、脚立を立てる場所に苦労する。しかも、上のほうはどうがんばっても手が届かない。最後は昨年同様、棒で叩いて落とすという作戦に変更。全体の9割くらいは収穫できたと思う。ただ、叩くのはよくないな。もっとよい方法があればよいのだが。2時間ちょっとの作業で汗だくとなり、風呂に入る。ひと息ついてから十勝ファーマーズマーケットへ。閉店間際だったため、お目当ての品は売り切れていた。代わりに格安で買える商品もあって、遅くやってくると得することもあるようだとわかった。
帰宅後、梅を水洗いし、選別作業を行う。1本の梅の木からずいぶん収穫できるものだ。3年前の大豊作に次ぐ収穫量。梅干し(または梅漬け)と梅酒の比率をどのようにするか? ここが問題だ。一連の作業を終えると、あとはもう何もする気にならない。ひたすら体を休める。
本物の梅干し
我が家の梅の木はもともと実家にあったもの。スロウ28号の記事「梅干しづくり」に登場したときには、まだ実家にありました。隔年で豊作の年があると聞いていましたが、サイクルが変わったのでしょうか。2年前は収穫ゼロでしたが、去年、今年といい感じで収穫できています。
我が家に梅の木があってよかった……。そう実感するのは自家製の梅漬けを食べるときですね。本当は梅干しも食べたいところですが、干すという工程を経ていないので今ストックされているのは梅漬け。それにしても、我が家の梅漬けは本物です。何が本物かはその人の味覚体験によって異なるでしょうが、50数年前に初めて食べたときと同じ梅漬けの味なのです。
いつの頃からか、市販されている梅干しは、僕の知っている梅干しとは似ても似つかないものとなってしまいました。一番の違いは甘味料が入っていること。当然ながら、甘い。その甘さが僕の許容範囲を超えて甘くなっています。30年くらい前までは、まだ許されるレベルの甘い梅干しもあったと思います。だが、今はとてつもなく甘い梅干しが主流。ですから、もう10年くらい市販の梅干しは買っていません。原材料名を見ただけでスルーする。僕と同じように「買いたくても買えない」という人も、少なからずいるのではないかと思います。
おにぎりの具も、本当は梅が一番好きなのですが、市販のおにぎりはもう買わなくなりましたね。
梅漬け、梅干しに必要な原材料は、梅、塩、しそ。これだけでよいはず。どうして、日本全体こんなことになってしまったのか。僕には不思議でなりません。米の消費量減少と関係があるのかな? あるいは、おかずが豊富になったため、しょっぱい梅干しが求められなくなったのかもしれません。塩引き鮭が少なくなったことと関係ありそうな気もします。
そういえば、僕自身、お茶漬けを食べる機会がめっきり減りました。梅干しも塩引き鮭もお茶漬けの定番。食生活の変化が本物の梅干しを片隅に追いやった。そのようにも考えられます。
食生活の転換期
一方、梅酒には氷砂糖を使います。こちらはある程度甘くてもよいわけです。梅干しにステビアやサッカリンを入れるという暴挙(?)は、誰かが梅酒の底に沈んでいる実を食べたときに思いついたのではないか? 僕はそんなふうに推理しています。
確かに、梅酒を飲むときの楽しみのひとつは、梅酒のしみこんだ梅の実を食べること。梅干しに甘味が加わっても悪くはないはず……と考える人がいても不思議ではありません。ですから、僕は甘味を全否定するつもりはないのですが、ステビアやサッカリンはやめてほしいというのが正直な気持ちですね。わずかにハチミツ入りというのなら、少しは納得できます。自分では買いませんが。
そういえば、スイーツとして梅を食べることもたまにあります。これはこれでおいしい。梅は果物だったということを思い出させてくれます。
スイーツとしての梅、そして甘味のある梅酒。これらに引きずられるように、梅干しも甘いものという認識が定着すると、僕の考える梅干しは絶滅してしまうに違いありません。
すでに、本物の梅干しの味を知らないという人が多数派になりつつある。僕の考える本物の梅干しは、「昔ながらの梅干し」と称されるようになってしまいました。今、スーパーで売られている梅干しが「本物」になるというのは、どう考えても納得がいかない。甘味料と添加物がたっぷりしみこんだ梅干しが本来の味だ。そう思い込んで育った人たちは、どんな味覚を持つ人に人になり、どんな食生活を送るようになっていくのでしょう? 僕は大いに危機感を持っています。
ただ、よく考えてみると、僕は梅干しの甘味そのものを拒否しているわけではありません。ハチミツや砂糖だけならよいと思うこともあります。確か、昔も梅干しに砂糖をかけていた人がいたような気がします。
最大の問題は原材料名に書かれているよくわからない添加物が多いということ。これに甘味が加わって、何とも言えない得体の知れない味に仕上がっているところが気になるのです。僕の個人的感想ですが、これにより、市販の梅干しも他の漬物もおいしいとは思えなくなった。
本当においしいと思えるものがなかなか入手できない時代。本物を求めれば、僕らの食生活は50年前に近づいていくしかないのかもしれません。買うのではなく、自分で漬物をつくる。何種類もつくるのは大変ですから、それを誰かと交換する。物々交換の時代がやってきそうな気がします。