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スロウな旅09 旅慣れる

スロウな旅09 旅慣れる

おはようございます。
 朝、いくつかの用事を済ませたら、10時になってしまった。旭川に向けて出発。午後1時到着。場所は旭川市内にあるハルニレカフェ。「チビスロウ村の仲間たちin Asahikawa」というイベント。出展者はスロウでおなじみの方々。スロウ編集部も雑誌やグッズを並べて出展していた。「スロウ村の仲間たち」の分室(?)といった雰囲気。しばらく買い物や会話を楽しんでから、出展者でもあるnidoさんの店を訪ねてみる。再び会場に戻ってから帯広へ。この日、旭川の気温は34度まで上がったようだ。ホットな夏はまだ続く。だが、帰宅すると、空気がひんやり感じられた。家中の窓を開けて空気を通す。

目的の不明確な旅

目的のない旅というのは、基本的にはあり得ないと思っていますが、目的のぼんやりしている旅は、これまで数多く経験してきました。僕の場合、旅には必ずカメラを持参します。ですから、少なくとも「写真を撮る」という目的はある。写真を撮る気にならない場合は、ただぶらぶらするとか、ただ車を運転しているという状態になります。けれども、いつも何かを追い求めている。このため、誰かと一緒にいても無言になることが少なくありません。
 15年前に雑誌スロウを創刊してからは、明確な目的を持った旅が増えていきました。取材旅行の場合は、「取材する」という明らかな目的がある。休日に遠出するときも、取材者の目で旅をすることが多い。撮影者+取材者という立場なので、ぼんやりしているように見えても、何かを見つけようという意識を持っています。
 昨日は「イベントに参加する」という明確すぎる目的がありました。イベント名に「スロウ」の文字が入っていますが、企画も設営も旭川の方々によるもの。編集部は一出展者としての参加。さらに言えば、訪れた僕もM氏も一来場者という立場。「スロウ村の仲間たち」がこのような形で広がっていくとおもしろいなぁ……と、ぼんやり考えていました。
 今年で7回目となる「スロウ村の仲間たち」。今年も更別村で開催されることに決まりました。出展者も来場者も、全道各地から集まってきます。遠方から参加する出展者も多い。長距離移動に見合う売上があるのか、ちょっと心配になりますが、これも一種の「旅」なのだろう、と僕は理解しています。それは「仲間と再会する旅」であったり、「新たな出会いを期待する旅」であったりする。経済面以外の目的を持って出展される人が多いのではないかと思います。
 一般の来場者の方々も、買い物やイベント感を楽しむことが目的ではないような気がします。単純に買い物をしても楽しいわけですが、何かを求めてやってくる人が多い。その「何か」は人によって異なるでしょう。何となく、目的を特定しにくい。目的がぼんやりしたまま旅に出るのと同じような感覚で「スロウ村の仲間たち」にやってくる人が多いのではないかと僕は想像しています。

慣れるか慣れないか

学生の頃、僕はときどき一人旅をしていました。といっても、多くの学生同様、あまりお金を持っていませんでした。原付に乗って東西南北どちらかに向かって走るだけ。当然ながら、事前に宿を予約することはありません。走るだけ走って、一泊しなければならないときには、時刻表に載っている安宿か民宿に電話をかける。ごく稀に一泊2000円くらいの宿が載っていることがありました。そのお金もないときは、当然ながら野宿ということになります。試しに、公園の脇に置いてあった土管の中で眠ったことがあります。恐ろしく寝心地が悪い。そして、蚊に刺されて不快極まりない。野宿は自分には向いていないということが判明しました。今となっては貴重な経験かもしれません。
 何かを求めてはいるものの、それが何だかわからない。そのような旅は学生時代、または20代の頃の特徴といえるような気がします。ただ、「何を求めているのかわからない」という感覚は、50代になった今も持ち続けている。このため、目的が明確すぎる旅に安心感を覚える一方、たまには目的のよくわからない旅もしてみたい、という欲求が湧いてくるものです。
 スロウ村とか、今回のチビスロウ村を訪ねる……という旅は、僕にとっては何だかよくわからない欲求の一部を満たしてくれるものではないかと思っています。
 僕の解釈では、スロウ村では経済活動は行われているものの、経済活動がすべてではない。地域おこし的な活動でもありますが、地域おこしを前面に押し出しているわけでもない。雑誌スロウの世界観を表現するという目的もありますが、スロウの世界観を訴えているわけでもない。
 ほぼすべてが、出展者と来場者の醸し出す雰囲気に委ねられています。それが、自然な形でイベント名の通り、「スロウ村の仲間たち」になっているのではないか? 今回、旭川のハルニレカフェに凝縮されたスロウ村を見て、改めてそう感じたのでした。
 僕は数多く旅をしてきたにも関わらず、旅慣れていないなぁ、といつも感じてしまいます。同じように、数多くのイベントに参加しながらも、イベント慣れしていない自分に気づくことが多い。どちらかというと、僕は雰囲気を醸し出す当事者ではなく、その周辺で写真を撮っている人物という立場になりやすい。
 そういた立ち位置で40年くらい過ごしてきたためか、人生にも慣れていないところがあります。今日、またひとつ年をとりました。そろそろ、旅にも人生にも慣れてくるはずだと思っていたのですが、この「慣れない」というところが自分の持ち味なのだと考えるほかありません。同年代のみんなは、旅、仕事、人生に慣れているのだろうか? ちょっと気になりますね。

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