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経営指針の話53 クロスSWOT分析

経営指針の話53 クロスSWOT分析

おはようございます。
 午前10時、ミーティング。帰宅後、次世代幹部養成塾の準備。午後2時、T社へ。現状認識の確認とこれからの方向性について。5時帰社。5時半から次世代幹部養成塾第22講。テーマはクロスSWOT分析なのだが、通常のシートを使わずに行った。

戦略、方針、ストーリー

経営指針を成文化する中でどこが盛り上がるのかというと、僕の場合、やはりクロスSWOT分析のところですね。経営指針を初めてつくるという人であれば、経営理念、10年ビジョンに盛り上がりを感じることでしょう。けれども、経営指針、10年ビジョンの場合、一度しっかり作成すると大きく路線が変わることはないはずです。
 一方、自社の内部環境、自社を取り巻く外部環境のほうは、どんどん変わっていくわけです。そうすると、目指すところは変わらなくても、やり方やスピード感のほうは変わっていく。何から先に手をつけるべきかという、優先順位も変わってくるのです。
 「経営指針成文化と実践の手引き」には、SWOT分析、クロスSWOT分析シートが用意されています。これは中小企業家同友会に限らず、広く使われているもの。自社の強みと弱み。外部環境の機会と脅威。これを記入していくのがSWOT分析シート。強み、弱み、機会、脅威をもとに、自社の採るべき戦略を策定するのがクロスSWOT分析ということになります。
 ここでは「戦略」という言葉を使いましたが、「経営指針成文化と実践の手引き」では「戦略」という言い方を避けているはずです。僕も他に適当な言葉が見つからず、つい「戦略」と言ってしまいますが、可能であれば避けたいところ。「ストーリー」と言い換えることもあります。
 「経営指針成文化と実践の手引き」では、「方針」が「戦略」に近い意味で使用されています。経営方針(戦略)を策定するには、精度の高いクロスSWOT分析が欠かせません。
 これまで経営指針研究会で多くの研究生の分析シートを見てきましたが、どう分析したらよいのかわからないという人が多いような気がします。研究生ばかりではありません。僕も実はクロスSWOT分析をもう一段深めることができず、ここ数年足踏み状態になっていると感じているところ。どうしても、型通りの進め方になってしまい、ユニークな方針を描くことができずにいるのです。
 10年前はそうではなかったような気がします。クロスSWOT分析について考えるのが好きでしたし、実現性はともかくとして、アイデアは豊富に浮かんできたものです。今も、アイデアは枯渇していませんが、泉のごとく湧き出してくるという状態ではありません。むしろ、ユニークなアイデアは僕以外の人から湧くようになっているのではなかろうか?
 そんなふうに思ったので、昨日の次世代幹部養成塾では、参加者からアイデアを募ろうと考えたわけです。
 ただし、理屈っぽく進めてしまうと、僕と同じような型通りのようなものになってしまうかもしれません。できるだけ、純粋に頭に浮かんだもの、今考えている課題について記入してもらうようにしました。提出してもらったシートを参考にしながら、来期の経営指針づくりのクロスSWOT分析と経営方針、経営目標をまとめてみようと思います。

異質化戦略とは

クロスSWOT分析シートでは、4つの方針(戦略)が立てられるようになっています。内部要因の「強み」と「弱み」、 外部要因の「機会」と「脅威」。それぞれ掛け合わせて方針を立てていきます。たとえば、強み×機会のところではこのような説明が書かれています。
 「自社の強みを活かして、さらに伸ばしていく対策。または積極的に投資や人材配置して他者との競合で優位に立つ」
 わかりやすいがちょっとまどろっこしいので、わが社では「強化戦略」としています。強み×脅威のところは「異質化戦略」、弱み×機会は「改善戦略」、弱み×脅威は「出口戦略」です。
 出口戦略というのは、言い換えれば撤退戦略ということです。撤退するのにわざわざ戦略が必要なのか? もしかすると必要なのかもしれませんが、単にやめればよいだけの話。ただ、実際にやってみると撤退というのは難しい。戦略は不要でも、計画的に撤退する必要がありそうです。
 ここで一番わかりにくいのは「異質化戦略」でしょう。なぜ、わざわざ外部環境で脅威と思えるところに飛び込んでいくのか? 人によっては理解に苦しむはずです。
 わが社の例で言えば、なぜわざわざ市場が右肩下がりの出版事業を始めたのか、ということになりますね。フリーマガジンである月刊しゅんから、広告・マーケティングの方向へどんどん進んでいけばよかったのではないか……という考え方もあるはずです。
 常識的には「強化戦略」にもっとも力を注ぎ込み、2番目に戦略となり得るのは「改善戦略」といえるでしょう。外部環境が追い風のところに自社の経営資源を投入するほうが効率がよい。
 ただ、自社のコア・コンピタンスはこれだ、と思っているものが明確である場合には「異質化戦略」のほうがおもしろいし、やり甲斐があるのです。北海道の地方都市で出版事業に熱心な会社。ほとんど例がないでしょう。先週末、札幌のチカホで名刺交換した人も、スロウの版元である我が社を「札幌にある会社」だと思い込んでいました。
 「異質化戦略」のネックとなるのは、事業化が難しいというところ。強化、改善戦略のほうが採算について考えやすい。その分、同業他者との競争も起こりやすく、体力勝負になるようなこともあるでしょう。
 あれこれ考えながら、自社にとって最良と思える方針(戦略)を立てていく。こうしたことを考えるのがおもしろいと思えるような人。そういう人が経営幹部であり、経営マインドを持った人ということになります。

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