おはようございます。
長距離移動した一日でした。朝6時半出発。目的地は小清水。9時半到着。11時まで撮影。次の目的地は紋別。けっこう距離がある。途中、網走で行われているNORTH TRUNK PLAZAを訪ねる。キッチンカーと車のトランクルームを使ったフリーマーケット。紋別に着いたのは午後1時半。プレ取材。30分ほど滞在してから再び小清水へ。4時半、最初の目的地に戻り、本取材。撮影はほとんど終わっており、人物写真のみ。I氏が取材している間に、夕焼けがいい具合になってきた。最高潮と思われる10分間、外に出て写真を撮り続けた。6時頃取材終了。宿泊は網走。
自己完結の長所と短所
昨日も興味深い取材となりました。スロウ次号の特集のための取材。今月は同じ職種の方を3人取材してきました。それぞれ仕事の進め方に違いがあっておもしろい。昨日は完全に自己完結型でした。ひとりで行うには相当な作業量と思われます。開店前の1時間あまり、僕は撮影に徹していたわけですが、動きが速くてなかなかタイミングがつかみにくい。しかも、僕の立っている場所は通路でもあったので、ぼんやりしていると仕事の邪魔をすることになってしまいます。今回の特集、どの取材も撮影の難度が高い。それは僕のフットワークと関係があるのかもしれません。
それはさておき、自己完結型という仕事のやり方。これがもし可能であれば、ひとつの理想形ではないかと僕は考えています。これには賛否両論というか、向いている人と向いてない人がいる。どちらがよいというものではなく、自分がどのようにやりたいのかということでしょう。
僕は自己完結型を目指している人間。ですが、実際の仕事では撮影者に徹することが多い。分業体制の一部を担っていて、おもしろい取材、ユニークな被写体に出合う機会を与えられています。分業すると、他の人、僕の場合はおもに編集者との関わりの中で仕事を進めていくことになります。それはおもしろくもあり、思い通りにならないということでもあり、若干のストレスを感じることもある。みんなそうした複雑な気持ちを抱えながら仕事をする。ここに分業しながら働く長所と短所があるのでしょう。
自己完結型になると、仕事の進め方や気持ちのあり方は大きく変わってきます。最大の違いは「自分の思い通りにできる」というところですね。媒体や仕事の中身にもよりますが、スロウの場合、自己完結型でページをつくろうと思ったら、かなりの部分思い通りに仕上げることができるものです。僕も自分の担当ページでは、撮影、執筆、デザインをひとりで行います。ただ、デザインは技術的に未熟なので、最後の仕上げはプロに依頼しています。それでも、ほとんど自分の思い通り。記事の出来不出来はすべて自己責任。ここが自己完結型のいいところ。そしてまた、自分の実力がハッキリわかるという恐ろしさもあります。
しかし、僕らの仕事における自己完結型は若干危うい部分があるのではないかと感じることがあります。自分にはない能力、センスを持っている誰かと協働することでよりよいものが生み出される……というチャンスを失っているのではないか? 僕は30年近く前から自己完結型を目指していたため、他人の力をうまく借りるということが苦手。自分の記事、自分の本であれば、全部自分でつくりたいという気持ちが強い。というよりも、他のやり方をほとんど知らないという弱点があります。
編集部の秘密
我が社の若手の人たちにも、分業型と自己完結型の両タイプの人がいます。うまい具合に使い分けているという人もいるでしょう。両方の経験をして、仕事の中身によって使い分けるのがベストかもしれません。
僕の見るところ、自己完結型を目指しながらも、自分に技術が備わっていないため「形ばかりの分業」を行っているという人もいます。この場合、撮影者は編集者の手足のように使われることとなりやすい。デザイナーも自分のセンスを生かすことができず、技術を使うだけになってしまうでしょう。分業型の仕事では、技術だけではなく、センスをも分業するという姿勢が必要なのではないかと思います。任せすぎず、支配せず……というバランス感覚が重要。編集者には特にそうした姿勢が求められますね。
さて、自己完結型といえば、我が社は会社組織としてかなりの部分、自己完結型のやり方を続けてきたところがあります。
普通、印刷会社が商業出版を行うことはほとんどなく、また出版社が印刷部門を持つというのもめずらしいでしょう。これだけでも、相当変わっているといえます。しかし、本当に変わっている部分は、もっと別なところにあるんですね。我が社の人たちの多くは「これが当たり前」と思っていますから、あまり変わっているとは感じていないことでしょう。
我が社の出版事業はほぼ完全に自社完結型になっている。スロウに関していえば、一部に寄稿いただいているページがあるものの、それ以外はすべて自社制作。通常の出版社であれば、こういう作り方はしていないはず。フリーライター、デザイナー、フォトグラファーに発注することが多いのです。丸ごと編集プロダクションに発注するのも当たり前のやり方です。
経済面でいえば、外注するほうが効率がよいに違いありません。技術を持つフリーランスの人はいっぱいいますから、本のクオリティも高められるかもしれません。ただ、我が社が求めているのは技術力ではなく、思いや考えが的確に伝わるかどうか、だと思うんですね。したがって、編集理念が共有されている人のみ、スロウの制作に携わるという仕組みになっています。自己完結型の編集部であることは、我が社の出版事業では外すことのできない条件なのです。
我が社は印刷会社であるため、これとは別に受注する仕事も多い。この場合は、さまざまなパターンがあって、ほとんどの場合、社外の方々とのコラボレーションが重要となります。やはり、自己完結と分業の両方をしっかり経験すること。それが個人としても組織としても、成長につながるのではないでしょうか。