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第44話 ローストビーフ丼と仕事観

第44話 ローストビーフ丼と仕事観

おはようございます。
 朝は写真セレクト作業。たくさん撮ると選ぶのに苦労する。だが、最小限の撮影量ではリスクが高まる。取材では毎回、苦労とリスクの間で撮影量が決まるといってよい。フィルム写真の時代はどうだったのか。もうひとつ、「コスト」という問題があった。だからフィルム写真時代に写真セレクトの苦労はほとんどなかった。おそらく、撮影技術もその頃がピークだったに違いない。フィルムの時代は考えて撮っていたが、デジタルになってからは感じたらすぐに撮るようになった。熟考の末、シャッターを押すという撮り方も悪くはない。たぶん、数年後にはそういう撮り方に戻るような気がする。
 午前10時過ぎから社内報の原稿を書く。午前中は短いほう。午後は長いほうを書く。短い原稿では伝えきれないところがあって、QRコードを加えてみた。長いほうの原稿は約5000字。複雑な事柄をできるだけわかりやすく書こうと試みる。だが、さほど簡単にはならなかったような気がする。頭を使いすぎたせいか、5時半ピッタリに仕事を終了した。夕食はチリコンカン。初めて食べたような気がする。

忘れても忘れられない味

チリコンカンもおいしかったのですが、僕の頭の中にはローストビーフ丼の残像があって、今も消えていません。夕食に食べたような気でいました。実際に食べたのは、一昨日の夕食と昨日の朝食だったかな? 正直言って、忘れました。忘れてしまったが、忘れられない味。
 実は「雑誌編集者と訪ねる本の世界 スロウな旅」の2日目夜に、バナナ牛のローストビーフを提供したのでした。そのときはローストディアがあって、鹿と牛の食べ比べということに。どちらも素晴らしい。ただ、その夜、僕は山ワサビの醤油漬けのセレクトを間違えた。ここが残念なところ。辛味が圧倒的に足りなく、醤油味がきつかった。市販の山ワサビ醤油漬けを使うときには、ちゃんと選ばなければなりません。
 やはり一番は、自分で山ワサビをおろすこと。これに勝るものはありません。それが無理な場合は、冷凍で売られている山ワサビを使用します。すでにおろしてあるので、とても簡単。これもないというときには、山ワサビの粉末を使うという手もある。「まあ、使える」というレベルですね。
 昨日と一昨日使ったのは、解凍済みの冷凍山ワサビ。これに醤油をたらしてローストビーフに乗せる。僕のお気に入りの食べ方は、ローストビーフ丼。バナナ牛のローストビーフ丼を食べると、難しいことを考えていたのが遠い過去のことだったかのような気持ちになる。脳みそも全身もほぐされていくような感覚。いや、すごいな。毎回、僕の期待を裏切らない味。いつも僕の望んでいる精神状態のところにまで運んでくれる。かなり偏愛系の書き方になりましたが、実際その通りなのだから致し方ありません。
 このローストビーフが我が家の冷凍庫に10袋くらい入っています。ひとつが200~250グラム。2~2.5キロということになります。もちろん、僕ひとりで食べるわけではなく、経営発表大会終了後の宴会に使用される予定です。我が家で開催される食事会では、これまでたびたびバナナ牛のローストビーフを提供してきました。みんな、ちゃんと味わってくれているのだろうか? 僕の観察するところ、ほとんどの人は話に夢中になっていて、純粋にローストビーフを味わっていないような気がしてなりません。

5秒間、目を閉じて静かに味わう

ローストビーフに限らず、人生には「完璧な姿勢で料理を味わう」という時間が必要ではないかと思っています。こう書くと、ちょっと堅苦しい感じになりますね。もちろん、話ながらパクパク食べてもよいのですが、バナナ牛のローストビーフの場合は、ちょっとだけ立ち止まって、ほんの5秒間だけでも静かに味わってほしい。バナナを食べているときの牛の幸せそうな笑顔が目に浮かんできませんか? 取材したのはもう10年くらい前だったと思いますが、僕の脳裏にこびりついて離れません。
 食事会ではローストビーフに山ワサビ醤油をつけて食べることが多いと思います。今週末は、ぜひローストビーフ丼を堪能してもらいたい。信じられないほど、ご飯との相性が抜群。1日3食、ずっとローストビーフ丼でいい……と思う人が続出するのではなかろうか? 何という贅沢。さすがに毎食というわけにはいきませんが、今週、僕は3回ローストビーフ丼を食べています。
 冷凍庫にバナナ牛のローストビーフを常備しておける心の豊かさ……。この場合は物質的豊かさになるのかな? まあ、両方でしょう。いざというときにはローストビーフがある。このゆとりが仕事力を維持する上では欠かせませんね。僕の場合、バナナ牛のローストビーフと並んでカキキンのカキえもんも、モチベーションを高めてくれる食べ物。ただ、牡蠣は冷凍というわけにはいきません。常備する場合はローストビーフということになります。
 現代人は、何となく心のゆとりを失っているところがあります。目を閉じて、静かに、そして純粋に料理を味わう……。そんな時間が自分の中にあるでしょうか? もしそれがなかったとしたら、意識して純粋に味わってみることです。チリコンカンでもキムチチゲでも、味に集中すると「生きるとはどういうことか」が少しわかってくる。ちょっと大袈裟かな? 
 味に集中することで、料理の中にあるちょっとした不純なものの存在に気づくこともあります。そうすると、次回は食材や調味料をもうすこしちゃんとしてものに変えようと思うかもしれません。その結果、エンゲル係数が高まることもあるわけですが、自分の人生にとってはそのほうがきっとよい。
 帯広にUターンしてから、たぶん僕は目を閉じて料理を味わう回数が増えました。たぶんそれは、味そのものの力だと思うのですが、もうひとつ、生産者の人たちの仕事に対する真摯な姿勢が頭に浮かぶからなのかもしれません。分野は異なるものの、僕らも真摯な仕事姿勢を持って日々過ごさねば、と考える。5秒間、静かに味わうだけでも、自分の人生態度はよい方向へ変えられるのではないか? そんな気持ちにさせてくれる食材、料理との出合いが大切ではないかと思っています。

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