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経営指針の話74 「世界観」と「哲学」の出合い

経営指針の話74 「世界観」と「哲学」の出合い

おはようございます。
 午前9時半出発。目的地は旭川。確実に到着できるよう、トマムまでは道東道を使う。雪道。ときおり吹雪。上川地方は完全に冬だ。雪一色の道路を見ながら走っていると眠くなる。仮眠しながら旭川へ。到着は午後1時半。ちょうど上川地域住宅セミナーが始まったところだった。休憩をはさんで講演が4本あり、僕は3番手。僕以外の講師は皆その道の専門家。僕は2、3割しか話を理解していないが、高断熱・高気密住宅の価値や研究・実践の成果が発表されていて興味深いものだった。
 僕は「経営指針で自社を異質化し、顧客に真の価値を提供する」というテーマで話した。講演時間は30分弱。時間内で経営指針の作成手順を説明するのは不可能。それよりも、「なぜ経営指針が必要なのか」について伝えることが重要だと考えた。スロウで取材した事例を紹介しつつ、顧客ニーズの変化や工務店・建築家の果たすべき役割について、素人なりに僕の考えを述べていった。最後は北海道中小企業家同友会のPR。同友会の詳しい説明は道北あさひかわ支部のS事務局長が行った。
 セミナーは4時過ぎに終了。車で移動し、懇親会会場へ。時間に余裕があったので、ホームセンターで長靴とスノーブラシを購入。この時期、帯広と同じような感覚で旭川に来ると、大変な目に遭う。短靴で来たのは無謀だった。懇親会では今後の取材対象となりそうな情報を得る。7時半頃、帰途につく。視界不良。しかも道路がつるつるの箇所があった。超安全運転。低スピードと4回の仮眠。その結果、帰宅は0時20分となった。

素晴らしい住宅とは

昨日の僕の話をひと言に集約すると次のようなものでした。
 「世界観を持つ施主と哲学を持つ建築家・工務店が出会うと、素晴らしい住宅ができあがるのではないか」
 「素晴らしい住宅」とは何なのか? さまざまな解釈があって定義づけはできませんが、ここでは「住む人を幸せな気持ちにする住宅」としておきましょう。そういう家は確かに存在する。道内各地で取材しながら、そう感じさせる家をいくつも見てきました。
 「世界観を持つ施主」というのはちょっとわかりにくい言い方かもしれません。自分(または自分たち)の住みたい家について明確な意志を持っている人のこと。現実には予算という問題もありますから、100%望み通りというわけにはいきません。けれども、「ここだけは譲れない」というものが誰にもあるわけです。その「譲れないもの」が機能なのか、質感なのか、もっと抽象的なものなのか……。
 意志は明確だが、言葉に表すことのできない何かを建築家や工務店に求めている。そんな施主が少なくないのではないかと思います。世界観はあっても、それを具現化することは素人には不可能。そこで、哲学を持った建築家や工務店が必要とされるわけです。
 経営哲学は企業経営者であれば、何かしらの形で必ず持っているものです。けれども、それをきちんと明文化している企業は多いとは言えません。経営理念はあっても、そこに哲学を感じないような言葉が並んでいることもあります。我が社の場合はどうなのだろう……。僕は今でもほぼ毎日、「この理念でよいのだろうか?」と考え続けています。

哲学と経営指針

昨日は「住宅」がテーマだったので、そのような話になったわけですが、僕らの仕事にもまったく同じことが当てはまります。そもそも、建築と印刷はよく似ている業界なのです。どちらも、顧客一人ひとりのニーズに応じて商品づくりが行われる。そして、積算によって金額が提示されることになります。単価については、建築と印刷では桁違いに開きがありますが、だいたい同じようなプロセスを経て、商品が完成し、引き渡される。僕は10数年前から建築業界の動きが気になっていました。
 印刷商品は種類がさまざまあって、単純にコストパフォーマンスが求められる品目もあるでしょう。そういう印刷物は差別化も異質化もしにくい。けれども、「世界観を持つ顧客」が印刷、出版、広告の分野にも存在します。そうした顧客がわずかずつではありますが、増えてきているのではないか? 雑誌スロウが創刊から15年続いているのは、自分の世界観を持っている読者に支えられてきたためではないか、と思うことがあります。
 人はただ単におもしろい情報を求めているわけではありません。一人ひとり人生哲学を持ち、自分の世界観の中で、より質の高い人生を送っていきたいと考えているわけです。今はおもしろおかしく暮らす(?)ことに喜びを感じている人であっても、「幸せとはどういうことか」に対する自分なりの答を見つけたいと思う瞬間がやってくるに違いありません。
 そのとき、我が社はどういう価値を提供できるだろうか……。世界観を持つ顧客に対応するような商品が我が社には欠かせません。
 自社の哲学を顧客に押しつけるようなことは、あってはならないと考えています。けれども、顧客や読者から求められたときに、いつでも提供できるような体制を整えることが重要なのではないか? また、自社の哲学や価値観はどういうものかについて、常日頃から広く伝えるよう努力すべきではないかと僕は思っています。そうすると、自社の哲学に共通する世界観を持った人が自社商品に関心を持ってくれるようになる。
 これを体系化し、全社に浸透させ、顧客に向けて周知を図っていくためには、経営指針の成文化が欠かせません。数値面だけの経営計画ではなく、自社の進むべき方向を指し示す「経営指針」をまとめていくべきでしょう。
 この話がわずか30分で伝わったとは思いませんが、ひとりでも共感し、中小企業家同友会に入会しようと思った人がいれば、旭川へ行った価値があったというものです。
 また、昨日のセミナーでは大きな刺激を受けました。このような熱心な勉強会。僕らの業界ももっと真剣に学ぶ場が必要ではないか? 自社の成長と同様、業界が成長していくことも大切ですね。

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