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写真論08 気持ちのいい写真

写真論08 気持ちのいい写真

おはようございます。
 午前9時50分、二次面接。11時50分、来客。来年行う講演の打ち合わせ。午後はプライベートな用事をいくつか片付ける。夕方、事務的作業等。もう一歩仕事を進めたいところだが、翌朝を考えて仕事を終える。

40年前の謎

急に思い出しました。40年くらい前のこと。「ぼくたちは気持ちのいい写真が撮りたい」という写真の入門書があって、僕は本のタイトルだけ気になっていたのでした。今も覚えているといるということは、よほど気になっていたのでしょう。ネットで調べてみたら、「宮崎洋司・GROUP PHOTO ONE 著 れんが書房新社 1978年」とある。ということは、高校2年の時、発行された本。本屋さんで表紙を見て気になっただけで、中身を読んだという記憶はありません。
 この「気持ちのいい写真」というところが、当時の僕には引っかかりました。というのも、当時は「気持ちのいい写真」とは、「中身の薄い写真」「単に明るいだけの写真」というふうに考えてたからです。「明るい」のを妙に嫌っていた。カメラの露出補正ダイヤルはマイナス1前後にセットしていた。日が照りつける明るい場所で撮影していても、心の中はセーフライトの暗く赤い光を求めていた……。あまり健全な高校生活ではありませんでしたね。
 しかし、僕自身はやはり「気持ちのいい写真」というものを求めていたのです。自分にとって気持ちのいい写真。それは「何かを考えさせてくれる写真」であったり、「別な見方、考え方を提示してくれる写真」だったりします。気持ちがいいというよりも、気持ちに変化をもたらすような写真。それが僕にとって観る価値のある写真であり、結果として「気持ちのいい写真」なのでした。
 仕事として写真を撮るようになると、こうした類いの写真が求められることは滅多にありませんから、必然的に「被写体の魅力をそのまま伝える写真」を撮るようになっていきます。たぶん、これが「気持ちのいい写真」なのではないか? 本を読んでいないので何とも言えませんが、僕はそう理解しています。30代の終わりまでは、仕事の写真と自分の作品の写真をハッキリと区別していました。使用するカメラも別々にするほどでした。
 こうした考えに変化が訪れたのは、スロウが創刊された2004年頃。いわゆる「気持ちのいい写真」を撮りながら、その中に、何かを考えさせたり、別な見方、考え方を提示してみようと試みたのです。その試みはまだ十分成功しているとは言えないのですが、いくつかそれに近い写真が生み出されるようになってきました。ようやく僕の中で「気持ちのいい写真」という言葉を素直に受け取ることができるようになっていった。30年近くかかってようやく……という感じです。
 それでもまだまだ僕にはわかっていないところがあります。「気持ちのいい」とはどういう状態なのか? 「ぼくたちは気持ちのいい写真が撮りたい」の表紙を見ると、草原と雲と青空のイラスト。十勝の夏のようでもある。僕はあまりに気持ちのいい環境で育ったため、その気持ちよさに気づいていなかったのかもしれません。

「気持ちのよさ」と自己成長

2004年以降、「気持ちのいい写真」が少しずつ撮れるようになっていき、それが僕の価値観全般に影響を及ぼすようになっていったところがあります。それは、たとえば「気持ちのいい職場環境」とか「気持ちのいい人間関係」といったようなもの。言うまでもないことですが、これが自社にとっては何よりも重要であるということ。
 もしかすると、「気持ちのいい写真」が僕の中で受け入れられるようになったのは、職場環境や人間関係を何とかしなければならない、という差し迫った問題意識から引き出された欲求だったのかもしれません。2000年代前半の我が社には、社風や人間関係に若干の問題がありました。僕に具体的修復能力はほとんどないのですが、何とかしなければという気持ちには非常に強いものがありました。「気持ちがいい」という状態がいかに大切なものなのか、そうではない環境に身を置いたことで痛いほどわかったのです。
 我が社の採用基準も、自然に「気持ちがいいかどうか」というものを重視するようになっていきました。平たく言えば、「気が合うかどうか」ですね。知識や技術も大事ではあるのですが、それ以上に「気が合う」と感じるものがお互いにあるかどうか。
 単に「一緒にいると楽しい」というだけでは仕事になりませんが、一緒に仕事をしていて気が合うかどうかは重要なポイントではないかと思います。ただ、人間は複雑なので少しわかりにくい。社内をよく観察すると、「気が合わない」とお互いに感じていても、実は「気があっている」という組み合わせを発見することがあります。
 ビジネスも写真同様、何かを考えさせたり、別な見方、考え方を提示してくれるものです。熱心に仕事をすれば「表面的な気持ちのよさ、居心地のよさ」ばかりではなく、ときに葛藤や対立が生まれることがあるものです。そうした感情を超越して、その上で「気持ちがいい」とか「気が合う」と感じることができるかどうか? 人格的に成長しないと、本当の意味で「気持ちがいい」という状態を感じ取ることはできないのではないかと思います。
 会社組織に勤めると実にさまざまな人がいますから、単純な意味で「気持ちいい」とはならないことがあるものです。どんなに理想的に見える会社であっても変わりはない。したがって、気持ちよく仕事をするには自分を成長させなければなりません。
 僕は写真の力を借りて、少しだけそのことがわかってきました。そして、もうひとつ、我が社の社風の変化を通じてわかったこともあります。「気持ちのよい方向へ変えていこう」という意欲と行動力を持った人が何人かいれば、実際その方向へ変わっていくのです。それが少なからず、僕の写真にも影響を及ぼしているような気がします。

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