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偏愛モノ語り10 SKSポケットマイクロスコープ 25X

偏愛モノ語り10 SKSポケットマイクロスコープ 25X

おはようございます。
 仕事はたまっているのだが、思い切って休日にした。やったことといえば、撮影用にお借りした作品を返却するため、梱包作業をしたことくらい。あとは買い物。そして、少しだけ部屋の片付け。

半世紀前の衝撃

僕のまわりにあるものの中で、一番長い年月ともに過ごしているものは……と考えると、ひとつ思い浮かぶものがありました。それは「SKSポケットマイクロスコープ 25X」。ペン型のルーペですね。
 最初にこのルーペを手にしたのは、僕のかすかな記憶では、1970年頃だったような気がします。もしかするともう少し後かもしれませんが、いずれにせよ10代前半のことでしょう。先代(父親)から、「覗いてみろ」と勧められたのだと思います。このとき、オフセット印刷の網点のおもしろさに気づくこととなりました。
 新聞、雑誌、チラシ等、さまざまな印刷物を覗いて、網点の違いを観察。僕はその頃、切手収集に目覚めていましたから、切手のディテールを観察することも多かった。ルーペで拡大することによって、凹版、凸版、グラビア、オフセットの違いがハッキリわかるようになりました。
 当時のオフセット印刷は今に比べると精度が低いものでした。これは人の技術というよりも、機械の精度の問題でしょう。たぶん、1970年代当時の我が社の場合、カラー印刷をするのに4回印刷機を通していたのではないかと思います。カラーで印刷するにはCMYKの4色が必要。4色機の印刷機なら1回紙を通すだけですが、1色機なら、4回刷る必要があるのです。このため、版ズレを起こしやすい。
 この版ズレをルーペで見るのは子供にとってはおもしろい体験でした。肉眼でもズレているのはわかりますが、それを拡大すると「こんなにズレている」と驚く。ズレていても、印刷されているものがちゃんと認識できることに僕は驚いていました。
 今持っている「SKSポケットマイクロスコープ 25X」は、たぶん1985年頃のものでしょう。新社会人になったときのもの。その後、50Xも入手したような気がするのですが、なぜか見当たりません。この25Xは常にペン立てに立てかけられています。
 10年近く前、このルーペで丹念に印刷物を覗いたことがありました。それは我が社としては初めて、FMスクリーンで印刷するようになったとき。従来のオフセット印刷はAMスクリーンと呼ばれ、標準的な印刷物は175線で印刷されています。網点が1インチ(2.54センチ)に175列並んでいるのが175線。高精細印刷になるとこの数字が200とか300になる。
 一方、FMスクリーンのほうは、ランダムに配置された小さな点の密度で階調を表現するという方式。AMスクリーンの700線に相当する高精細印刷。この印刷方式を我が社で実用化することとなり、ルーペで覗いてみたのです。「これは写真の粒子よりも細かい」というのが第一印象。AMが35ミリフィルムならば、FMは4×5といった感じ。ただ、両者の違いは2枚並べて比較してみなければわからないかもしれません。175線でも実用上十分。ですから、AMからFMに変わったからといって、そのことに気づいたお客様はほとんどいなかったはず。気づくのは同業者の方々。そういうものかもしれませんね。
 印刷関係者には必需品だと思ってきたポケットマイクロスコープですが、最近ではあまり使っている人を見かけません。それだけ印刷の精度がよくなってきたということでしょうか? 僕はたまに、オフセット印刷とオンデマンド印刷を見分けるときに使っています。

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