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偏愛モノ語り13 耳栓または静寂

偏愛モノ語り13 耳栓または静寂

おはようございます。
 午前中は自宅で仕事をする。午後1時、入社試験と面接。3時半帰宅。写真セレクト作業と事務的作業。不思議なことがあった。すっかり存在を忘れていた写真が、ある編集者の記憶からよみがえったのだった。そのデータはハードディスク内の意外なフォルダに格納されていた。セレクト後、大量のデータを送る。6時終了。
 ドラッグストアでアルコール消毒液を買おうと思ったら、どこも売り切れ。みんな行動が素早いな……。当面はみんな手洗い、うがいをちゃんとするだろうから、インフルエンザにかかる人は激減するに違いない。

イヤーウィスパーとノイズキャンセリング

今回は過去の偏愛モノということで、耳栓にしようと思います。
 と言っても、僕は耳栓を偏愛しているわけではなく、静寂な環境を愛しているわけなんですね。耳栓そのものが好き、という人はあまり聞きません。ですから、耳栓の代わりにイヤホンで音楽を聴くこともあります。
 耳栓には3タイプあるようですが、僕がこれまで使ってきた耳栓はフォームタイプ(ポリウレタン素材のものが多い)かフランジタイプ(シリコン素材で何層かになっているもの)。着脱が簡単なのはフランジタイプですが、遮音性はフォームタイプのほうがいいような気がします。
 僕はいつ頃から耳栓を使うようになったのだろう? 記憶は定かではありません。たぶん、原稿を書く仕事をするようになってからのことだと思います。1980年代の終わり頃でしょうか。
 人の話し声が聞こえてくると原稿を書くことに集中することができない。また、電車の音とか、ハードディスクのブーンという音も苦手。かつての仕事場は西荻窪駅前にありましたから、電車だけではなく、ホームのアナウンスまで聞こえてきます。これを遮断するために購入したのが最初だったような気がします。
 当時は耳栓といえばイヤーウィスパー。「科学の耳栓」というキャッチコピーでした。常に数個のイヤーウィスパーが引き出しに入っているという状態。ですが、僕よりも上手の人がいました。それは吉祥寺で出版社を経営しているNさんで、誰かが「耳栓で引き出しがいっぱい!」と証言していました。考えたり、ものを書く人にとっては静寂な環境が非常に大切なのです。
 東京時代は写真を撮る、原稿を書くというスペシャリスト的な活動が大部分。耳栓をしていても問題はありませんでした。2000年、ソーゴー印刷に入社すると立場としては経営者ですから、極力耳栓はしないよう努力するようになりました。耳栓をしていると「聞く耳は持たない」と誤解されそうです。おかげで原稿を書くスピードが段違いに落ちてしまいました。
 このため、今では原稿を書くのはほぼ自宅と決めています。自宅書斎は基本的に静かなのですが、ハードディスクの音と時折聞こえる車の音が気になって、耳栓を使うことがあります。数年前にはデジタル耳栓の「MM1000」(キングジム)を購入。確かにモーター音はほぼ消える。ノイズキャンセリングの威力はすごい。ただ、どんなに高性能な耳栓を使っても、人の声は聞こえてしまいます。完璧な静けさというわけではありません。
 耳栓の代わりにイヤホンでジャスやクラシック音楽を聴いて、集中を試みることもあります。ノイズキャンセリングイヤホンは素晴らしい。静寂な環境を手に入れることができるようになってきました。
 その一方、別な事実にも気づくこととなりました。案外、周囲がざわざわしていても原稿が書けるようになってきたのです。切実に求めていた頃には手に入らず、手に入るようになった頃には必然性が薄れる。世の中、そのようなものなのかもしれません。

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