
おはようございます。
札幌での新入社員研修1日目。新卒、新社会人として参加している人もいれば、ある程度社会人経験のある中途入社の受講生もいます。それぞれ、派遣企業から大きな期待を持って送り込まれた人たち。そして、ただ派遣するのではなく、上司や先輩社員がサポーターとして参加するのが、この研修のユニークなところ。僕は2012年から毎年参加していますが、毎回学ぶものがあります。1年たつと忘れてしまうからなのかもしれません。
研修は当然ながら新入社員に向けて行われます。しかし、講義の内容の一部は先輩社員にこそ学んでほしいこと。たとえば、「仕事観」の話などは、実際に数年の社歴を持つ人のほうが、リアリティを感じながら学ぶことができるものです。夜は新入社員4名と先輩社員6名で1日目の研修の振り返りを行いました。2日目の今日も楽しく、深く学んでくれることでしょう。
仕事に対して目的意識を持つには
自分は何のために働いているのか?
この問いについて、ずっと考え続けている人もいることでしょう。また、そんなことを考えても仕方がない……と思って、目の前の仕事だけに集中している人もいるはずです。しかし、この問いは自分の仕事人生の中から消し去ることのできないもの。僕も、毎日というわけではありませんが、「本当は何のためなのだろう?」と考えながら働いています。
「何のために」という目的意識が希薄になってしまうと、自分の仕事に対する取り組み態度は義務的になったり、やらされ感が湧いてきたりするものです。
長い仕事人生。人生100年時代になると、仕事人生の長さは40数年どころの話ではありません。60年、70年働くという人も増えていくのではないでしょうか。60年も義務的に働くなど、僕には考えられませんね。ひとつひとつの仕事には本来目的がある。そして、自分の仕事人生にも目的やテーマというものがある。新入社員にはそのことを知ってほしいし、目的を忘れかけた先輩社員がいれば、思い出してほしいと思っています。
本来あるはずの目的を忘れてしまう最大の要因は、「分業体制」にあるのではないかと僕は考えています。製造業には特にその傾向が強い。企業の規模が大きくなればなるほど、システマチックに分業が行われることとなります。自社の製品がどのようにしてできあがるのか、ちゃんとわからずに働いている人もいるのではないでしょうか。
印刷会社の大部分は中小企業ですから、全体を把握するのはさほど困難なことではありません。けれども、自ら興味や関心を持って「どのように印刷製品がつくられているのか」について知ろうとすることが大切です。自分に与えられた仕事だけ、そつなくこなすことができればいい、という考えのままでは目的意識を明確に持つことはできません。
自分が受け持つ仕事の範囲は狭いかもしれないが、仕事全体についておおよそ把握している。そういう人が社内に大勢いると、職場は活性化し、働く人はみな協力し合いながら楽しく働くことができるのではないかと思います。
このことは、僕が東京時代に感じていたこと。東京では零細企業を営んでいましたが、ほぼ一貫生産に近い形を築き上げていました。雑誌の記事や広告をつくるという仕事。雑誌全体から見れば一部分に過ぎませんが、それでも「記事や広告を完成させる」という点では一貫生産だったのです。最小限の人数で企画、取材、撮影、執筆、デザインを行って入稿する。全員仕事の目的を理解しながら働いていました。
ソーゴー印刷に入社し、全員が目的を共有しているわけではないことを知り、軽いショックを覚えたことがあります。何のために使われる製品なのか? 仕事に携わる人がそのことを理解していなければ、製品の品質に何らかの影響を及ぼすことになるかもしれません。
「何のためにあるのか」。このことについて、仕事の全体像を知っている人は関係者全員にしっかり伝えなければなりません。
今日、我が社の大部分の雑誌や書籍は自社の印刷工場で生産されています。スロウは一時期外注先で生産されていたこともありましたが、今は社内生産です。一貫生産のよいところは、働く目的を共有しやすいというところにあります。
編集者が印刷現場へ行って直接要望を伝えることができる。また、印刷担当者がよりよい本をつくるために、編集者に提案するといったことも行われるようになりました。これは社内一貫生産だから可能なこと。我が社の場合、クリエイティブ系の仕事も社内一貫生産体制。出版事業に関する限り、ライター、デザイン、写真、イラスト等を外注することはほぼありません。
僕らの仕事はスペシャリストになっていきやすい傾向を持っています。編集者は編集だけ、フォトグラファーは写真を撮るだけ、印刷オペレーターは印刷機を操作するだけ……。そうなりやすい。
けれども、僕としては少なくとも「多能工」を目指してほしいと思っているんですね。ひとつだけに留まらず、複数の能力を身につけること。すぐには無理であっても、コア・バリューとともに周辺バリューも磨いてほしい。そう考えています。
自分の職域が広がれば、全体を見渡すことができるようになっていくのです。僕は写真と原稿の仕事を両方行うようになり、求められている仕事は何なのかわかるようになっていきました。潜在ニーズについてイメージできるようにもなる。そうすると、自分からさまざまな提案ができるようになっていく。
自分のアイデアや提案が採用されるようになる。そんなところから、仕事というものは楽しくなるのではないでしょうか? 企業としても「言われたことをやるだけの人」よりも、「自ら発言、行動し、成果を生み出してくれる人」の登場を期待しています。
我が社の目指す会社像は、限りなく社内一貫体制を築き上げ、社内のどこからでもアイデアが出てくるような組織です。