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第13話 オンデマンド印刷

第13話 オンデマンド印刷

おはようございます。
 昨日行ったことといえば、写真セレクト作業と書類のPDF化、そして取材先の検討作業くらい。何だかぼんやり過ごしてしまった日曜日。こういうこともあります。本当は、必要なときに必要なアイデアが次々湧いてくるような状態を目指しているのですが……。

格段に進歩したデジタル印刷機

必要なときに必要な分だけ印刷する。それがオンデマンド印刷という言葉の本来の意味。ですが、デジタル印刷=オンデマンド印刷というイメージが広く普及しています。今回はデジタル印刷機によって可能となったオンデマンド印刷について考えてみたいと思います。
 僕がオンデマンド印刷機を最初に見たのは、2002年頃、札幌の印刷会社を見学したとき。モノクロ専用のオンデマンド印刷機でした。冊子用に使われているとの話。確かにそうした需要はあるに違いない。興味はありましたが、帯広ではビジネスにならないだろうな……と思いながら説明を聞いていました。
 オンデマンド印刷の普及期は21世紀に入ってからのことだったのではないかと思います。我が社の社内でもたまに話題に上ることがありました。2002年当時は「使えない」という声が圧倒的に多かったと記憶しています。
 その頃、デジタル印刷機で刷られた印刷物は妙にテカテカしていました。いかにもカラーコピーといった感じ。さらに、経年劣化が激しいのではないかといった話も出ていました。真偽のほどはわかりません。
 僕もテカテカした質感を見ただけで、「このままでは使えないだろう」と思ってしまいました。東京時代に使っていたカラーレザープリンタみたいだ、と思いながらオンデマンド印刷を見ていました。
 ただ、テカテカしているのを除けば、けっこう使えるに違いない。そして、次第にテカテカが気にならない機種が登場するようになってきました。こうなるとほしくてたまらなくなってくる。
 今度は和歌山の印刷会社を見学。デジタル印刷機を使ったビジネスについて学ぶこととなりました。ただ、オンデマンド印刷を使って本当に効果的に仕事をするには、印刷機のデジタル化だけでは不十分であるということもわかってきました。ビジネスの仕方を大きく変えていかねばならない。この問題はまだ解決しておらず、僕の中では今なお大きなテーマとして持ち続けています。

それはさておき、デジタル印刷機は期待通りに活躍してくれることとなりました。もちろん、表面はテカテカしておらず、見た目にはオフセット印刷とほとんど同じように思えます。印刷の専門家が見れば一目瞭然かもしれません。けれども、印刷物を読む人、使う人は印刷方式の違いを気にすることはありませんから、一定の品質をクリアしていれば何の問題もありません。
 デジタル印刷機にはトナーまたはインクジェットが使われます。将来的にはインクジェットが主流となっていくでしょうが、今はまだトナー機を使う印刷会社が多いと思います。
 デジタル印刷の最大の特徴は「無版印刷」であるということ。オフセット印刷などでは必要な「版」を出力しなくてよいのですから、その分コストを削減することができる。ですから、量産する場合はオフセット、4、500枚くらいまでならオンデマンドといった具合に印刷会社では使い分けています。
 デジタル印刷の好ましい点は、損紙率が極めて低いというところ。オフセット印刷であれば、どんなに腕がよくても何10枚かの損紙が発生します。印刷機の進歩とオペレーターの技術の向上によって、ずいぶん損紙率は低減したと思いますが、これをゼロにすることはできません。
 デジタル印刷機のメリットはこうした無駄の少なさにありますね。ただ、最大の弱点といえるのが「カウンタ料金」。これがある意味絶妙な金額(?)に設定されていて、急速なデジタル化を阻んでいるのではないかと思います。たぶん、2030年くらいまではオフセット印刷が印刷の主流であり続けることでしょう。

デジタル印刷機の登場によって、これまでとは異なる印刷物をつくることができるようにもなりました。そのひとつにバリアブル印刷(可変印刷)というものがあります。印刷データの一部を変えて、一枚一枚異なる印刷物をつくることができるのです。
 一番よく使われる例としては、入場券などのナンバリング印刷ですね。従来、我が社ではナンバリングを印刷するのに、ハイデルベルク社製のプラテンという印刷機が使われていました。たぶん、今でも使えるはずですが、デジタル印刷機のほうが圧倒的に効率的。また、ナンバリングだけではなく、住所・氏名を差し替えたりすることもできますから、用途はさまざま考えられそうです。
 「文字、図、絵、写真などの原稿をもとに印刷版をつくり、印刷インキなどを塗布して紙などの被印刷物に押しつけ、機械的に複製すること」という旧来の印刷の定義は、デジタル印刷の誕生によって変更を余儀なくされることとなりました。それとともに、印刷の新たな可能性を切り開くことにもなるでしょう。
 我が社の場合、今後は自費出版の分野でオンデマンド印刷が盛んに行われることになるでしょう。DTPの普及によって、印刷の裾野は大きな広がりを持つこととなりました。自費出版というジャンルは、将来的に有望ではないかと僕は考えています。
 印刷需要の中で小ロット印刷の比率は高まりつつあります。我が社を見ても、デジタル印刷機の稼働率が高い。僕としてはトナーよりもインキ(またはインク)のほうが好きなので、インクジェットのデジタル印刷機の進歩に期待しているところです。

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