おはようございます。
完全休養日。ひたすら休む。活動らしい活動といえば、カレー作りに2時間かけた程度。テレビで映画などを見る。
大きく回すか、小さく回すか
昨日は「ライフ」という映画を見ていました。アメリカの雑誌「ライフ」を題材にした映画。グラフ雑誌としてあまりに有名ですが、僕はさほど関心がなかったので、「今でも発行されているのだろう」などと呑気に考えていました。今朝確認してみると、とっくに休刊になっていたんですね。
ウィキペディアによると、1936年、ニュース週刊誌として創刊。最盛期には1350万部以上売れていたが、1972年に休刊。1978年、月刊誌として復刊。発行部数は150万部。だが、赤字体質により2000年、再び休刊。2度目の復活は2004年。新聞折込の週刊誌として復刊。折込版の「ライフ」は1200万部発行されたものの、2007年、3度目の休刊となる。オンライン版は休刊後も続いていたが、2012年に閉鎖。映画では印刷版を休刊し、オンライン版のみとなった「ライフ」が描かれている……。
改めて述べるまでもなく、「ライフ」で活躍した写真家はそうそうたる顔ぶれ。表紙には「知っている写真」が多い。僕自身、さほど関心がないはずなのによく知っている。写真史から見ても重要な位置づけといえそうです。
僕はどちらかというと、ビジネス面のほうが興味があります。ひとつには、100万部以上も売れていて、どうして赤字で休刊に追い込まれることになったのだろう……というところ。よほど高コスト体質だったのか? そのあたり、よくわかりませんが、日本とアメリカとの市場環境の違いがあるのかもしれません。
ふたつ目には、2度も復刊していること。また、休刊中にも特別号が何度も発行されています。ということは「この雑誌をつくりたい、発行したい」という情熱を持つ人が数多くいたということ。週刊誌→月刊誌→新聞折込と形態を変えて、何とか存続させようと努力する人たちがいた。また、それだけの価値ある雑誌だったということでしょう。
70年以上も続いたわけですから、立派というほかありません。時代を象徴するような雑誌といえます。
考えてみると、新聞折込版の「ライフ」が休刊となった2007年は、日本ではフリーペーパー・フリーマガジンの絶頂期でした。アメリカのほうが先を進んでいると考えるべきでしょうか。日本のフリーペーパー業界は2006~08年あたりを頂点に、その後下降線をたどることになります。次第に、というより急速にインターネットメディアが台頭。フリーペーパー・フリーマガジンも電子媒体との相乗効果に活路を見いだそうとしています。
そんな中、少部数で16年間発行し続けている「スロウ」はどんな存在なのだろう? 自分たちで発行しながら、自分でもよくわからなくなることがたまにあります。
まったく比較対象とはなりませんが、ひとつだけ「ライフ」と共通するところがあります。それは「発行し続けたい」という欲求が編集部を動かしているという事実。「仕事だから」と義務的に取材・執筆している編集者はたぶんひとりもいない。利益が出ようが出まいが(本当はそれではいけない)、記事づくりが楽だろうが困難だろうが、ただひたすら取材、撮影、執筆、デザインする。それが何のためなのかは、個人によって多少の違いはあるでしょう。けれども、おおむね編集理念に沿って一つひとつの記事がつくられている。
スロウが曲がりなりにも16年続けてこれたのは、大きくしすぎなかったことがその理由かもしれません。東京で仕事をしていた頃、発行部数20~30万部でも休刊となる雑誌がありました。お金を回して行くにはある程度の規模が必要ですが、バランスが崩れると継続することはできない。小さく回せば、何とか続けられる。東京時代の教訓(?)があって、僕らはどうすれば質を高めながら小さく回すことができるのか考え、今の編集部を築き上げていきました。
「しゅん」にも「スロウ」にも最適規模と最良のビジネスモデルがあるに違いありません。まだ、僕らは正解を見いだしているとは言えません。研究と実験を繰り返す必要があります。