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写真家的業務改善行動57 とろ火と強火

写真家的業務改善行動57 とろ火と強火

おはようございます。
 ほぼ休日。午前11時、撮影用商品を受け取りに幕別町札内へ。午後はゆったり過ごす。夕方、ステーキを焼く。長年の疑問が解決した。ようやくおいしいと思えるステーキを自分で焼くことができた。ここまで30年もかかった。その焼き方は従来の常識とは反対のものだった。ほとんど仕事らしい仕事はしなかったが、僕にとっては大きな一歩だと思った。

常識を考える

「常識で考える」のではなく、「常識を考える」。何かの本だったか、研修の中に出てきた話か忘れましたが、「で」と「を」では大違いですね。常識そのものを疑う。自分たちが常識だと思ってきたことが実は間違いだった……。そんな経験をすることがたまにあるものです。
 間違いというわけではないものの、「これまでの常識」に縛られて、それ以外のやり方が試してみようとしない自分がいることに気づくことがあります。ステーキは最初に強火で焼く。僕はこの常識に縛られていました。それ以外の焼き方はないと信じていた。ところが、この焼き方でうまく焼けた試しがない。IHだからか? フライパンに問題があるのか?
 いろいろ調べるうちに「最初は弱火またはとろ火で焼く」という方法があるとわかりました。半信半疑。しかし、そこに科学的根拠が書かれていたため、信じることにしたのです。エビデンスがあると、「常識」という呪縛から自由になることができる。何かを変えようと思ったら、エビデンスとともに伝える必要がありますね。
 それはともかく、「古い常識」「思い込み」「チャレンジしない」という3点セットが揃うと、会社も人もまったく成長しなくなってしまいます。常識は常に変わり続ける。そう考えるべきでしょう。
 50年前も今も肉は肉。焼け方に違いがあるわけではありません。しかし、調理器具が違っていたり、作り手の熟練度が違うことによって、方法を変えたほうがよいこともあるわけです。
 考えてみると、写真の撮り方も大きく変わりました。商品撮影の場合、以前は露出計やカラーメーターを使ってからポラロイドで試し撮りして、それからようやく撮影していた。今はそのようなことはしません。いきなり撮る。色のシビアな撮影ではホワイトバランスを調整してから撮る。それだけです。もう20年間、露出計もカラーメーターも使っていません。
 たびたび起こるわけではありませんが、そのようにして古い常識を捨てることがあるものです。自分の中に「……せねばならない」とか「……であるべき」という掟をいっぱい持っている人は要注意ですね。自分の思考が硬直化していないか、常識のとらわれて、化石のようなやり方を延々と続けていないかどうか? 僕の中にもいくつかありそうですね。時代に合わなくなってきている古い常識が。
 最初はとろ火で、最後に強火で焼き色をつける。この方法は今の時代の仕事の仕方に合致しているのかもしれません。昔であれば、相当な覚悟がなければプロのフォトグラファーにはなれなかった(どのくらい昔かは別として)。今は極端に言えば、技術的なハードルがほとんどなくなったに等しい。その結果、「ちょっと試してみる」ことができる。いわば、とろ火のような熱量でも始められる。これは強火(覚悟を決めなければダメ)でその世界に飛び込んだ世代の人間からすると、あまりにも常識外れ。しかも、とろ火世代の人たちが案外うまく時流に乗ったりすることもある。強火世代の人たちは困惑し、自分たちが化石化していることに気づく……。
 しかし、ステーキの場合は最後に強火で焼き色をつけることになる。とろ火でちょうどよく火が通った人たちも、どこかで強火体験をする。人生はおおむねバランスがとれている。そう考えると、どのタイミングで強火になるのか、興味深いところです。内側がジューシーなまま、しっかり焼き付けることができるかどうか。若手の人たちの挑戦を見守りたいと思います。

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