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第3回 十勝型の域内循環

第3回 十勝型の域内循環

おはようございます。
 昨夜は帯広ロータリークラブ次年度プログラム委員会がありました。委員会が終わり、懇親会になると、なぜかみんな京都の話で盛り上がっていました。懇親会参加者4名中、京都出身者ひとり、大学時代を京都で過ごした人ふたり。ずいぶんレアな情報が飛び交っていました。僕はというと、大学時代にときどき通っていた程度。京都の情報は断片的で、しかも学生時代の記憶はぼんやりしてしまっています。

地域間競争を超えて

今朝はテーマが思い浮かばないなぁ……。そう思っていたら、プリントアウトした書類が目に飛び込んできました。中小企業家同友会とかち支部定時総会(4月25日)のパネルディスカッション要領。
 ディスカッションのテーマは、10月に開催される道研に沿ったもの。「十勝からの挑戦」~十勝型の域内循環を全道に拡げよう~。「十勝型の域内循環」って、本当のところどのようなものなのだろう? じっくり考えたことはあるものの、誰かと討議したような記憶はない。同友会等の集まりの中でも、断片的にしか聞いたことがないような気がします。道研開催に向けてタイムリーなテーマと言えるかもしれません。
 域内循環という言葉は、僕の子供の頃に果たしてあったのでしょうか? 聞いた覚えがありません。十勝モンロー主義という言葉も知ったのは大人になってからのこと。いつ頃から使われるようになったのでしょう? 案外知らないことだらけですね。そんな僕がパネラーのひとりとして登壇してよいのだろうか?
 ただ、「今こそ域内循環だ」という思いで、僕はここ10数年間活動しています。かつては「十勝モンロー主義」でしたから、域内の範囲は「十勝」でしたが、今は「北海道」ということになるでしょう。道内でWin-Winの関係を築いていかねばなりません。

4、50年前、僕の子供の頃はどうだったのかというと、ほとんど域内循環なんて考えていませんでしたね。僕が子供だったという理由もありますが、普通に域内でお金もモノも循環していた。通常の買い物は近所の個人商店。たまに藤丸やサニーデパートへ行くといった消費生活。本屋さんも街中にいくつもありました。
 今なら札幌まで3時間弱で行くことができますが、昔は何時間かかったのだろう? 道東道はおろか、日勝峠も石勝線もない時代。車で札幌へ行くときは狩勝峠を越えていくことになります。なぜか峠でイカ焼きが売られていて、それを食べるのが子供の楽しみでした。
 そんなノスタルジックな記憶もいくつか残ってはいますが、経済的側面から見ると、十勝は日高山脈がそびえているおかげで独立性が保たれていた。依田勉三らによる開拓の歴史と高くそびえる日高山脈。この2つが十勝の風土を形成しているような気がします。もうひとつ加えるなら、気候の違いでしょうか。
 長い間地域間競争に巻き込まれずにすんできた。そして、自分たちで必要なものを築き上げてきた。そんな歴史があるわけです。
 僕は大学時代は大阪、社会人になってからは15年間東京に住んでいました。大阪といっても、住んでいたのは南河内郡河南町(後半は太子町)。田んぼに囲まれた田舎でした。大阪にも東京にも「域内」という概念はなく、地元の商品を購入しようとか、地元企業に発注しようといった発想は皆無だったのではないかと思います。
 大都会に住むと、農産物、海産物は「域外」のものを購入することになります。広島産の牡蠣を食べた翌日には、宮城産の牡蠣を食べる……。産地別に食べ比べをするといった楽しみ方。たぶん、東京に住んでいると、そこあたりに「豊かさ」を感じるのではなかろうか? 何しろ、日本中、世界中のものが集まってきますから。

域内循環という考えはこれと対極にあります。道内のものにできるだけこだわる。あまりこだわりすぎるとストレスがたまりますから、ほどほどがよいでしょう。けれども、牡蠣を食べるなら厚岸産かサロマ産(他にもありますが)。お米はもちろん道産米。
 地元調達率をどこまで高めることができるのか? それを個人レベルで行うところに「豊かさ」があるのではないかと思います。これを「身土不二」という観点で捉えるのか、経済循環として考えるのか、人によって違いはあると思います。けれども、こうした制約を自分(または自社)に科すことによって、不自由さと引き換えに豊かさを得ることができる。このあたりに地方に住むおもしろみがあるのではないかと思います。
 地方に住んでいながら便利さや経済性ばかりを追い求めてしまったなら、どう頑張っても心の豊かさは得られないのではないかと僕は考えています。東京のほうが圧倒的に便利でものが豊富にあるからです。しかも、お金を稼ぐ場もたくさんある。ないのは新鮮な空気と広い土地と自然環境でしょうか。
 地域の中でできるだけ、人、商品、お金、情報をまわしていく。この努力を怠り、安易に域外から持ってこようとすると、引き換えに失われてしまうものがあると知るべきでしょう。
 域内循環という意識が薄れていくと、人、商品、お金、情報のすべてが東京をはじめとする大都市に吸い寄せられてしまうことになるでしょう。ただし、閉鎖的な考えにとらわれるべきではなく、地域をよくするために大都市にある資源を活用するといった発想も求められます。その意味でもデュアル思考を持ったUターンや移住者に対する期待度は高い。
 理想的な姿としては、市場を奪い合うような地域間競争を早く終わらせることですね。各地域が域内循環によって十分豊かになっていて、たまには他所のものも買ってみよう……といった満ち足りている状態でしょうか。個人レベルでは実現させている人が多いと思いますが、会社レベルではまだまだ課題が多いですね。

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