
おはようございます。
昨日行ったことは3つ。事務的作業、某プロジェクトについて考えをまとめる、ある同業者の会のイベント企画。夕方、買い物へ。
杏より梅が安し
誰もが知っていることわざの一つに「案ずるより産むが易し」がある。あれこれ心配するよりも、実際にやってみると案外たやすい……という意味。確かにその通りではある。難しそうに見えて、実際にはたやすい業務もある。経験の浅い人であれば、たやすい業務であっても実際以上に困難に思えるものだ。「案ずるより産むが易し」は社会人初心者向けのことわざといえよう。
ビジネスにおいて「たやすい」と思えるものはそう多くはない。新規プロジェクトともなると、たやすいということはまずない。難しそうに見えて、実際に難しい。だから、案じながら前向きに行動する。「産むが易し」はあり得ないと認識した上でプロジェクトを進めていく必要がある。
困難を覚悟し、2、3段階厳しめな予測を立てながら行動していくと、「実際にはそれほど難しくはなかったな」と思える瞬間がやってくることもあるだろう。だから、「案ずるより産むが易し」は、必ずしも初心者向けとは言い切れないのかもしれない。
我が家には梅の木が1本ある。今年は満開のとき大雨が降り、さらに実が少し色づいたときに猛暑日が続いた。収穫はさほど期待できない。ただ、昨年の梅漬けがまだたくさんある。3年前の梅酒もまだ残っている上、僕はほとんどお酒を飲まなくなってしまった。在庫は十分。来年豊作ならそれでよい。
このように書くと、さも梅に詳しいように誤解されそうだ。僕は梅と杏の区別もつかないような人間。食べてみれば違いがわかるに違いないが、木を見ても実を見てもよくわからない。ただ、通販サイトで生梅と生杏を比べてみると、梅のほうが安いことがわかる。価格がまちまちだから、「杏より梅が安し」とは言い切れないかもしれない。だが、昨年までの我が家の梅の収量を考えると、梅はそう高いものではないように感じられる。
ところがである。これが高級な梅干しともなると、価格が跳ね上がる。1キロ1万円するようなものもある。杏の加工品はシロップ漬けかドライフルーツだ。高級品もあるとは思うが、梅干しほど原価との価格差はないと思われる。
ビジネスでは「どれだけ付加価値をつくり出すか」が最重要テーマとなる。付加価値とは自社の能力であり、魅力の度合いと言い換えてもよい。杏よりも原価の安い梅を使って、杏のシロップ漬けよりも高い価格で販売できる梅干しのような商品を生み出す。それが一つの考え方。一方、杏のシロップ漬けを量産することで自社の付加価値額を高めるという戦略もあるだろう。機械化、自動化によって生産性を高めるか、手間暇をかけて商品の付加価値を高めるか。案じなながらも、新しい何かを産みだしていく。そこに仕事の大変さとおもしろさがある。
「案ずるより産むが易し」はビジネスパーソンすべての人に関係する言葉。一方、「杏より梅が安し」は経営者、経営幹部が頭に入れておくべき言葉である。中小企業は設備力、仕入力、原材料調達コストといった面で大企業には到底敵わない。したがって、「梅」を仕入れて付加価値力を高め、高級梅干しを販売するというのが有力な戦略ではないかと僕は考えている。
ちなみに我が家の梅漬けは、梅、しそ、塩以外の材料は一切使っていない。蜂蜜や甘味料の味に慣れている人には、わかりにくい付加価値。それだけに、本来の味を知っている人にとっては代えがたい付加価値を有している。